Swarm Robptics 940x474 current topics

自律型ロボットの未来は、人間の知性や感情よりも、シロアリやムクドリ、ミツバチの群れのように高度な集団的知性を模した群ロボット工学の方があかるいかもしれません。実際、宇宙空間や惑星の開拓や、気候変動が着実に進行している地球内の過酷な環境下での単純作業など、現実的で切実な需要は既にあるといえます。

映画史上初のアルゴリズムで動く登場人物は、2000年代の幕開けを飾った『ロード・オブ・ザ・リング』3部作の溢れ返るような大軍勢でした。しかし、同作品で世界に名を馳せたピーター・ジャクソン監督が、1992年公開の『ブレインデッド』でモダンゾンビ映画史の総決算をおこなう金字塔を打ち立てたことはあまり知られていない事実です。



Lord of the Rings 940x391 current topics

今から数十年後、火星では初の入植者を迎える環境が整っているだろう。宇宙服を着る必要すらないかもしれない。普段着のまま宇宙船のタラップを降りれば、暖かくて明るい家が待っている。

火星への入植が現実になれば、最初に送り込まれるのはロボット——それもシロアリやアリなどの昆虫にヒントを得た「群れ」で行動するロボットだろう。小さな頭脳に群れのルールと青写真だけを詰め込んだ比較的旧式なマシンの大群が、過酷な環境の中に人間に適した複雑で気密性のある居住空間を造ってくれるはずだ。

人々の話題に上るのは大型で知能が高く複雑なロボットばかりかもしれないが、将来最も人間の役に立つのは小型でシンプルなロボットだろう。これらのロボットは単体ではひどく無能だが、群れになれば高性能の極みに達する可能性がある。

群ロボット工学は急成長を始めたばかり。最初の研究室が誕生したのは90年代だが、最近まで研究資金のほとんどを助成金に頼っていたため、研究ベースは比較的ゆっくりだった。

風向きが変わったのは、起業家が台頭し、群ロボットが従来の主力だった大型マシンよりも低コストで省エネで人間にとって低リスクな問題解決の可能性を秘めていることに大企業や防衛産業が気付いたからだ。今ではグーグルなど世界有数の企業がこの分野の研究に投資。欧米の主要大学の多くの研究室が、企業や政府の支援で群ロボット工学の開発を進めている。国際宇宙ステーション(ISS)でも最近、無重力空間でのアリでの群行動を観察する実験が行われた。

半導体、動力装置、作動装置、材料、センサーといった必要な技術がようやく出そろい、スピードや性能が向上、小型化も進んでいる。ペンシルベニア大学で研究中の小型クアドコプター(4つの回転翼を持つヘリコプター)は一糸乱れぬ編隊飛行をやってのける。自律型極小ヘリで宙返りもお手のものだ。

しかし課題はロボット単体をどう動かすかではない。雑音などよけいな情報があふれるなかでロボットが他の物体やロボットにどう反応するか、確実に理解しなければならない。シンプルなロボットに重要な情報を見分けさせ、それだけに集中させる方法を研究者は模索している。

魚や鳥の群れは時に、ドラマチックな行動を見せる。群れとは包括的で統一された知性が存在するかのように振る舞う集団のこと。1つの生命体に近く、個体よりもはるかに多くのことを達成し得る。

なかでも最も注目されているのが、アリやシロアリなど昆虫の群れだ。10匹でも1万匹でも群れをつくれる「拡縮性」、同時に同じように行動できる「並列性」、少しくらい数が減っても問題ない「耐故障性」があるからだ。

シロアリは巣をつくる際、最初の1匹は土を唾液で固めたものを置く。すると唾液のフェロモン(においによって行動を左右する化学物質)をかぎつけた別のシロアリが同じように土を固めて積み重ねる。これを繰り返すうち、やがて高さ2mを越える立派な蟻塚が出来上がる。

問題はこうした本能的な行動をいかに数値化するか。適切なアルゴリズム(コンピューターに指示を与えるための計算方法)の開発は「簡単ではない」と、ライス大学のジェームズ・マクラーキン助教は指摘する。スイス連邦工科大学チューリヒ校のラファエロ・ダンドレア教授も「もっぱらアルゴリズムを研究している」と言う。

集団の動態を調べる社会科学の研究は既に実用的なノウハウをもたらしている。例えば飛行機に乗り込む乗客の流れをスムーズにしたり、テーマパークの乗り物の待ち時間を減らす方法などだ。

だが、こうした応用は序の口にすぎない。大学院時代にアフリカとオーストラリアでシロアリが巨大な蟻塚を作るのを観察したワーフェルは、ロボットで同じことができないかと考えた。

10年後、彼はハーバードの研究チームと共に「自律型建設」方式を開発した。周囲のわずかな情報をキャッチし、2、3の簡単な動作をするロボットが集団で複雑な構造物を完成させるシステムだ。ロボットの大きさは約20×11㎝。7個の赤外線センサーと5個の超音波ソナー、加速時計を搭載してある。本体は研究者の手作りで、途中から3Dプリンターで量産した。

群ロボットに「こういう構造物を作れ」と指示を与えたら、後は作業を見守るだけでいい、ロボットは発泡スチロールのブロックを見つけてはせっせと運んで積み重ね、息の合ったチームワークで構造物を完成させる。

作業手順はプログラミングされておらず、ロボットは「ある動きをする/しない」という単純なルールに従っているだけだ。それでも複数のロボットが同時に動いても、衝突して立ち往生するなどということはない。

この自律型建設のように、群ロボットは建設現場での活躍が期待されている、ロボット作業員は充電さえすれば不眠不休で働くにし、過酷な環境にも耐えられる。しかも、自律型ロボットの仕事にはミスがない。絶えず自分たちで行った作業をチェックするようプログラミングされているからだ。

群ロボットが実用化されたら、まずは3つのD、つまり単調で、汚くて、危険な作業を任せることになるだろう。さらに、人類が直面する何台の解決にも役立つことが期待される。私たちを取り巻く世界は急激に変化しており、気候変動は気温や気象パターン、地形にも影響を及ぼしかねない。

いつか群ロボットが堤防を築き、インフラを補修し、災害時に生存者を見つける日が来たら、ロボットは人類の生存に不可欠の存在、綿失態の文明が次の段階に進むための導き手になるかもしれない。

via 未来を担う群ロボットの可能性|日本版ニューズウィーク 

現代とアルゴリズムの問題については既に何度か書いてきています。アメリカの金融街のように複数のアルゴリズムが複雑な超高速ネットワークを形成し、個々の設計者の意図や人間の管理を越えたジャングル化とその暴走は既にあらわれ(「金融戦争、第6番目の戦場と超高速アルゴリズムのジャングル化」)、国家の安全保障から企業のサーヴィスまで、私たちは何らかのかたちでアルゴリズムによる管理と分類、規制の恩恵を被っています。(「次世代オフィスデスクStir Kinetic Deskと政治のアルゴリズム規制」) こうした浸透の根本には、アルゴリズムが人間の感情や思考、行動の結果をおどろくべき繊細さで模倣できるようになっていることがあります。(「アルゴリズムの表情認識はヒトの共感的知性の代替物になりうるのか?」)

私たちは、以前書いたとおり(「理念の終焉、Gゼロ時代のイスラム系過激派武装組織、イスラム国とボコ・ハラム」) 、理念や責任を生みだす知性の構成原理を亡きものとした過酷な現実を生きています。形而上学的な思考は生きる余地をゆるされず、個の成熟と人格の自律は集団への順応のためにだれもが放棄せざるをえなくなっています。古代、近代以来の「かくあるべき」という人間像が波打ち際の砂のように掻き消されただけではなく、そうした像や理念の形成を可能にしてきた価値秩序の構成原理が現実の加速度的な新陳代謝に耐えられなくなっているのです。今日程、個の成熟の方法論と学習のツール作りがもとめられる時代はないでしょう。(「現代技術と学習意欲、中国軍兵士の繊弱さと米軍の脳力強化プロジェクト」)

まず、脱人間中心主義的で進化論的な人間像の再構築が必要です。それは、かくあるべきという理念の提示ではなく、地球生命として、動物として、哺乳類として、霊長類のヒトとして、そして、文明人として、近代人として、現代人として、情動的、構成的、合理的に、模倣し、判断し、思考しながら、葛藤し、意思決定し、実践に身を投じられる創造的人間の仮説として多角的に実証されなくてはなりません。もちろんそれは、物理環境や技術環境との原理的な相互作用と歴史的発展も含め、私自身が使命と任じる哲学上の仕事でもあります。同時に、知のエンジニアリズムの視点でより良く表現し、必要とするひとたちとシェアをはかる必要のあることは以前書いたとおりです。(「羊谷知嘉「未来の幸福の条件を考える」in 三文会」)」

ナショナルジオグラフィック誌の上級編集者のピーター・ミラーは、社会性昆虫や社会的動物から学べる賢い群れの基本原則を、自著『群れのルール』のなかで以下のように抽出しています。

  • ローカルな知識を重視し情報の多様性を維持すること

  • 単純なルールを適用し複雑な計算の必要性をなくすこと

  • メンバー間で相互作用を繰りかえし意思決定を迅速化すること

  • 定足数を設定し意思決定の精度を高めること

  • 個々の行動に適度なでたらめさを残して集団が常に型通りの解決策を選ぶのを防ぐこと

もっとも、上記の根底には、個々が何らかのかたちで意思決定すること、すなわち、集団的同調性にじぶんの意思を委ねないこと、委ねさせないことがあるのですが、この点だけをとっても理性を信じすぎた近代人とそれすらも放棄した現代人は組織デザインや制度設計において彼らを模範とすべきでしょう。





ゾンビ映画史の批評と分析は以前別のブログで2度書いています。まず、1978年公開のジョージ・A・ロメロ監督の大ヒット映画『ドーン・オブ・ザ・デッド』と、2004年公開のザック・スナイダー監督による同名リメイク作品との比較にみられる仮想化問題(参考:)、1968年公開の同じくロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』と、ベトナム戦争の悲惨と人格荒廃を見事に対象化したフランシス・F・コッポラ監督の『地獄の黙示録』にみられるゾンビ化問題のふたつです。(参考:) そして、ゾンビ映画史に重要な論点をもうひとつ付けくわえると、モダンゾンビの総決算と現代ゾンビの誕生の両方を果たしたピーター・ジャクソン監督によるアルゴリズム化問題があります。

1992年公開の『ブレインデッド』は、世界的には短い公開期間ながら大変な評判を呼んだゾンビ映画の金字塔です。1981年公開のサム・ライミ監督の『死霊のはらわた』に顕著な前年代のスプッラッターブームをパロディし、ジャクソン監督はクライマックスの30分間でプール1杯分300リットルの偽血を嵐のように用いる(破格の手法は、2013年公開のフェデ・アルバレス監督による『死霊のはらわた』の驚くべき高級リメイク作品で再演される)のですが、低級性やショック作用に淫することなく、全体としては優れてコミカルな傑作映画として成立しています。とりわけ、後年、世界的に社会問題化した母子関係の肥大化し長期化した地獄を主題にし、父殺しならぬ母殺しの成長潭として本作を描いたジャクソン監督の文学的な手腕は見事のひとことです。

興味深いことに、この作品以降、1960年代末からのゾンビブームは冬の時代を迎えます。ゾンビと血糊がスクリーンの世界から消えたのです。しかし、アメリカ初の国産モンスターはその愚鈍さと行動の単純さを買われて当時はまだ黎明期にあったコンピューターゲームとヴィデオゲームの簡素なプログラミングの世界で生き延びます。そして、2000年代初めの指輪物語3部作の大ヒットを契機に、ジャクソン監督の支援を受けたグラッフィクデザイナーのステファン・レゲラスにより再び映像の世界に大軍勢として蘇ります。上記引用の動画は、レゲラスが後に起こしたマッシブ・ソフトウェア社のプロモーション動画ですが、彼らが現代の映像作りをいかに変えたのか良くわかります。





現代の技術革新のフロンティアは、以前書いたとおり(「3Dプリンティング技術の未来ともの作りのパーソナル化革命)、ソフトやビットの仮想化世界から既にハードやアトムの第2次デジタル革命へと移っています。ステファン・レゲラスの開発した群衆シミュレーションソフト”MASSIVE”もまた、個性をもったロボット開発をめざすデビッド・ハンソン製作の”Zeno”に人工知能として搭載されています。理念の終焉後を生きる私たちは、自然界に生息する模範的で時に暴走もする社会性昆虫や社会的動物の群れからヒトの「本能」を解明し、学び、再設計し、彼らや人間を模したアルゴリズム・ゾンビをうまく手懐げ鍛えなくてはなりません。何にせよ、時代の大規模変動には退行や復古的発想ではなく、変化の徹底をとおした未来への突き抜け以外に途はないでしょう。


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Chika Hitujiya

I'm Futurist, producing "Whole Earth Museum" and co-producing art project Run! Miumushi-Kun & Garapadish. This common purpose is really simple. Making you enjoy and preserving the enough requisite knowledge & things for human to survive the crisis of period.
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