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覇者なきGゼロ時代の本質は理念と責任の欠如にあります。それは、アメリカ民主政治の機能不全やヨーロッパ各国における極右勢力の拡大、ロシアの大衆迎合的な侵略行為、中国やシンガポールの国家資本主義の躍進に顕著ですが、1990年代以来国際的に活動してきたイスラム系過激派武装組織の近年の変容にも見受けられます。

ウサマ・ビン・ラーディンをはじめとしたアルカイダの指導者たちは世界各地の傘下組織に7つの掟を残しています。それは、統治者視点から意外にもなされた「テロの戒律」なのですが、イラクとシリアにまたがる地域でカリフ制の復活を宣言したイスラーム国はこの掟を以前から公然と破っています。Gゼロ時代の武装組織は、イスラム原理主義の皮を被った狂犬の群れなのです。


Islamic State2 current topics

シリアを荒し回り、イラクを大混乱に陥れているイスラム教スンニ派テロ組織ISIS(イラク・シリア・イスラム国、別名ISIL)。その猛烈な勢いにイランは不安におののき、アメリカの政治家たちは史上最も危険なテロ組織とみなしている。

だが、かつてISISが属していた国際テロ組織アルカイダの指導者たちは、無秩序な残虐行為は組織の弱体化につながることを、傘下の組織に口酸っぱく説いていた。

1.領土獲得にこだわるな

ビンラディンはスンニ派の統治する世界を目指していたが、そのために各国から領土を奪うのはうまい方法ではないと考えていた。10年の書簡では次のように書いている。

「イエメン(のアルカイダ関連組織)が始めようとしている治安当局に対する長期的な戦闘は、民衆に大きな不安を与える。時間がたち、身の回りに犠牲者が出てくると、人々は戦いをやめたいと思い始める。そうなると大衆迎合的な世俗的政府が支持を得やすくなる」

ISISはこの掟を完全に無視している。その名前からして国を自称し、占領地域の大きさを成功の尺度にしている。

2.民間人を犠牲にするな

ビンラディンは「一般市民の不要な犠牲者」を出さないこと、とする指針を策定するよう部下に命じていた。モスク(イスラム礼拝所)など公共施設を爆破したことが、「多くの国がムジャヒディン(イスラム聖戦士)に背を向ける」結果を招いたと、ビンラディンは嘆いた。

ISISはこの指針も無視している。人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチと国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、ISISはシリアでもイラクでも一般市民は殺しまくっている。

3.残虐な言動を慎め

ビンラディンまたはアティヤ・アブドルフマン(アルカイダの作戦担当責任者、11年に無人機で殺害された)は、イエメンのアルカイダ組織に宛てた書簡で、「ムジャヒディンへの支持を傷つける言動は慎め」と命じている。また、「敵がわれわれをケダモノだとか殺人者とか非難するのを避けるため、声明は慎重に作成」しなければならない」としている。

一方のISISは、蛮行がトレードマークだ。捕虜の首を切り落とし、シーア派は皆殺しにすると宣言。捕虜を射殺している写真や、走行中の車にマシンガンを浴びせる映像をインターネットで公開している。

先月中旬にはイスラム兵1700人を処刑する写真を公開した。写真には「薄汚いシーアを100人単位で処刑中」「基地から逃げたシーアの粛正」「(イラク首相)マリキ率いるシーアの運命だ」「自ら死にいく連中」と説明書きが並ぶ。

4.厳格な統治は程々に

一般にスンニ派は、シーア派よりもイスラムの戒律を厳格に実行する傾向がある。だがビンラディンはアルカイダの傘下組織に対して、シャリーア(イスラム法)を厳格に適用し過ぎて大衆の反感を買うことがあってはならないと諭している。

アブドルラフマンに宛てた11年の書簡には、「ソマリアの兄弟たち(イスラム原理主義組織アルシャバブのこと)に、犯罪人をシャリーアで裁くときは、預言者(ムハンマド)が示した『疑わしきは罰せず』のルールを適用するよう伝えてほしい」と書いている。

ISISは新しい町を攻略すると、最初はこのルールを守っているが、やがてキリスト教徒やイスラム「背教者」を処刑するようになる。イラク第2の都市モスルを占領した2日後には、住民に飲酒と喫煙を禁止し、女性には外出も禁止した。

こうした統治は、これまでISISに協力してきたスンニ派勢力の一部離反を招いている。「ISISが占領した地域では一般市民が殺され、ISISのイスラム法解釈が押し付けられている」ち、ある部族の長老はニューヨーク・タイムズ紙に語った「とんでもないことだ」

5.協力者と戦うな

ビンラディンは、ISISの前身である「イラク・アルカイダ機構」の好戦的な性格を戒めていた。

「アンバル州の子供たちが正当な理由もなく(子供は聖戦の脅威にはならない)犠牲になるまでは、多くのイラク人がアメリカに対する聖戦に参加していた。しかしこの事件のために、アンバル州の部族は聖戦に反対するようになった」

イラクでは先月、クルド人(大部分がスンニ派)の政党事務所を爆破したほか、ISISに協力してきた元バース党武装組織の関係者宅を爆破した。このため一部の元バース党員はISISを敵と見なすようになり、クルド人民兵はイラク軍のISIS討伐作戦に参加している。

6.民衆の空腹を満たせ

「国や町を支配する前に、(住民の)基本的ニーズを満たすことを考えなければならない。たとえ占領勢力が住民の大半に支配されていても、基本的ニーズを満たせなければ、その支持は低下するだろう。食糧や医薬品がないために子供が死んでいくことは誰にとっても耐え難い」

ISISはこのルールも無視している。逆に彼らの設立文書は、ISISの支配下に入った人民の「生活の改善よりも信仰の改善の方が重要だ」としている。実際、今年1月からISISの支配下にあるイラク中部のファルージャでは、「食糧、水、医療の深刻な不足」が赤十字によって報告されている。

7.敵を警戒させるな

ビンラディンは10年、「イエメンで聖戦を指揮する勢力が台頭すると、国内外の敵を警戒させる」として、テロ活動の急速な活発化を戒めた。

サウジアラビアが警戒感を募らせたら、「莫大な資金力でイエメンの部族を利用し、われわれを殺させようとするだろう。さらに向こうは大衆の支持という武器を得る」。そうなればイエメンのアルカイダ勢力は、「十分な準備が整わないうちに敵の集中砲火を浴びることになる」

ISISはこうした思慮深い戦略は取らず、やたらと敵をつくっては挑発している。シリア・ヨルダン国境にある複数の検問所を占拠したり、模するのトルコ総領事館から総領事ら職員と家族を拉致するといった具合だ。

さらに、トルコ人トラック運転手31人を拉致して身代金500万ドルを要求しているとされる。イラク中部サマラのシーア派大寺院を攻撃し、「シーア派の本拠地に乗り込む」として首都バクダッド攻撃を目指している。

via ISISが破る「テロの戒律」|日本版ニューズウィーク

イラクのISISをめぐる中東情勢については以前別の記事に書いています。(「イランの脱「ならず者国家」、ISISの武装蜂起を契機とした中東新秩序の可能性」 ) ハマスとイスラエルの戦闘過激化がどのような影響を与えるかはわかりませんが、マリキ首相が酷く愚かで悪どい政治家であったことを読み抜けなかった点を除けば前の記事と基本的な考えは変わりません。むしろ、米国とイラン、シリア、クルド、そして、サウジアラビアまでをも含めた奇妙なIS包囲網が早期に形成されたことは注目に値します。しかし、欧米各国の眼は撃墜されたマレーシア航空NH17便の悲劇に向き変わったので決め手を欠いたIS問題は長期化していくかもしれません。

イデオロギーの終焉は、20世紀後半から様々にいわれ続けた言説です。とりわけ、1991年のソ連解体と翌年からより押し進められた鄧小平の改革解放路線がそれを裏付けるものでした。実際、ワシントンに本部をおいた世界銀行と国際通貨基金は欧米圏出身の経済人たちの手で、民主主義的、自由市場的改革を先進国以外の国で実行してきました。これは、1989年に国際経済学者のジョン・ウィリアムソンによりワシントン・コンセンサスとして定式化されました。しかし、1991年初頭のクリーンな空爆映像で仮想的に報道された湾岸戦争以降、1993年、2001年と、アルカイダのテロ活動は世界各地で頻発していきます。つまり、現代のイデオロギーは欧米の理念と経済政策によって世界各国を緊密に繋いだ反面、過激なイスラム原理主義として世界各地に分散化し、インターネットとソーシャルメディアの普及により偏在化していったのです。ISが貴重な戦力とし、世界の国々がイラクやシリア内戦終結後を恐れるのはこうしたデジタルネイティブな聖戦士の帰還です。

イアン・ブレマーの提唱するGゼロ時代は、以前書いたとおり(「羊谷知嘉「未来の幸福の条件を考える」in 三文会」)、今日の超国家的な協調行動と惑星規模の工学技術の開発を阻害する国際情勢のデッドロックです。しかし、現代のハイパーコネクティヴなグローバル社会を市場原理が基礎付け、如何なる理念や統治であろうとも経済成長の多寡だけが国家の目的と尺度となり、それゆえ、各国首脳は内向きとなって世界全体に対する理念と責任を放棄せざるをえない今日の本質的特徴は、2012年以降、資金調達のために企業さながらの年次報告書を発表している「テロの戒律」破りのISにも同様にいえます。(参考:) そして、各地域のスンニ派武装勢力ですら態度を決めかねている彼らの建国宣言にいちはやく支持を表明したのが、ナイジェリアのイスラム系反欧米武装組織のボコ・ハラムです。


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「 サッカーもできない体になっちまった。激しい運動をすると内蔵が飛び出してしまうから」

ナイジェリア中部の都市ジョスの住人デーヴィッド・ラファエル(35)はそう言って、英プレミアムリーグの名門チェルシーのロゴ入りTシャツをまくり上げた。腹部には縦に、深い傷痕が残っている。

ジョス市内でもキリスト教徒の多いカボン地区内で小売店を営むラファエルは、10年のクリスマスイブに起きた7件の同時多発爆弾テロの被害者。7件のうち2件では、ミサの行われている聖心会カトリック教会が標的となり、教会のすぐ外にいたラファエルも被害に遭った。「現実とは思えなかった」と彼は当時を振り返る。「20分ほど意識を失っていた。目が覚めたときは病院にいた」

この同時テロでは少なくとも32人が死亡し、74人が負傷。ナイジェリア北東部で活動するイスラム武装組織ボコ・ハラム(「西洋の教育は罪」の意) が犯行声明を出している。

ボコ・ハラムは特定の指導者を持たない多くの武装集団の緩やかな連合体で、アルカイダとの関連も疑われている。彼らの目的は、ナイジェリアの連邦政府を転覆させて、国全体にシャリーア(イスラム法)を適用すること。キリスト教会を狙うテロは、この時が初めてだった。

あれ以降、彼らは軍の兵舎や警察署、刑務所、学校や国連の建物までも標的にして、無数の攻撃を繰り返してきた。今年5月にはジョスの市場周辺で2つの爆弾を炸裂させており、少なくとも123人を殺害。4月にはある学校の女生徒200人以上を誘拐し、世界中から非難を浴びている。

グッドラック・ジョナサン大統領は5月、北東部3州に非常事態宣言を発令。軍も頻繁に掃討作戦を実施しているが、これまでのところボコ・ハラムを倒すことはできていない。

ナイジェリアの人口はアフリカ最多の1億7000万。イスラム教徒(主に北部に居住)とキリスト教徒(主に南部に居住)の比率はほぼ半々で、宗教間の衝突は日常茶飯事だ。こうした不安定な状況を、ボコ・ハラムは深刻化させ、この国を宗教戦争の瀬戸際へと追い込んでいる。

とりわけジョスの状況は深刻だ。ジョスのあるプラトー州の人口もキリスト教徒とイスラム教徒に二分されており、キリスト教徒のほうがやや多い。地理的にはイスラム教徒の多い北東部に食い込む形だが、政治の実権は多数派のキリスト教徒が握っている。市政の実権をめぐる政治的な争いは11年も続いており、その過程で何千人もの命が失われ、何万人もの住民が住む家を追われている。

教会への襲撃や自爆テロを防ぐため、ジョス市街は毎週日曜日、治安部隊によって封鎖されている。軍の検問所や自警団の立てた鉄柵で、キリスト教会に通じるすべての道路はブロックされ、教会の入り口には金属探知機が置かれている。「教会に行くときは、何が起きてもおかしくないと覚悟している」と語るのは、ジョスの大司教イグナティウス・ガイガマ(55)だ。

しかし、こうした警戒心もむなしく、12年3月11日に事件は起きた。高級住宅地区のレイフィールドにある聖フィンバー教会で朝のミサがおこなわれていたときに、ダイナマイトを積んだ車が教会の門の前で爆発したのだ。この事件では、ボコ・ハラムの自爆テロ実行犯3人を含む15人が死亡した。

この日、教会の警備に立っていたジョン・キム・リチャードは爆発の数分前に持ち場を離れ、金属探知機を取りに行っていたために難を逃れた。

「戻ってくると、そこは地獄だった。2人がバラバラに吹き飛ばされ、あちこちに肉片が散らばっていた。数百メートル先の司祭館にも遺体の一部がこぼりついていた」と彼は語る。

聖フィンバー教会への攻撃に怒り狂ったキリスト教徒たちは、教会前の大通りを走るイスラム教徒のバイクタクシーを止めては運転手を下ろし、切り殺し、焼き、その肉を食ってしまった。

「ジョスではイスラム教徒にもキリスト教徒にも敵対心が刷り込まれている。多数派は少数派を迫害せずにはいられない」と、アルハジ・オスマン・イブラヒム(40)は説明する。イスラム教徒でビジネスマンのイブラヒムは、キリスト教徒地区に囲まれた地区の出身だ。

彼によると、ボコ・ハラムのせいで今は商売ができないという。キリスト教徒のビジネスパートナーが、一緒に働くのを拒むからだ。「ボコ・ハラムは正体不明だから、私は仲間かもしれないと言われた」

長年にわたる宗教対立にボコ・ハラムが加わって、今やジョスのキリスト教徒とイスラム教徒はほとんど接触を絶っている。それぞれが独自の青空市場を開き、どんな子でも受け入れるはずの公立学校も、現在は宗教で分断されている。

過去10年でキリスト教徒はこの地域から次第に姿を消していった。キリスト教徒の教師は学校を去り、キリスト教徒の教師は赴任の辞令が出ても命の危険を恐れてやって来ない。

「断絶は大きな問題だ。住民は互いを知り、共存し、交流すべきなのに」とイザム・イシャク教育長(53)は言う。「無知が存在すると、宗教は扱いにくい危険なものになる」

ジョスの危機は宗教だけではなく、資源や権利をめぐる対立もある。住民はキリスト教徒の3つの主要部族とイスラム教徒のハウサ・フラニ族から成る。どちらも自分たちこそ先住民だと主張するが、土地所有をはじめ、公的雇用の配分や医療、大学の奨学金などで優先権が認められる「先住民の地位」はキリスト教徒が独占している。

イスラム教徒は憤り、二流市民扱いされていると感じる。

99年頃からナイジェリア北部の12州がシャリーアを導入したため、ジョスのキリスト教徒は不安を募らせた。プラトー州にもシャリーアが強制されないかという不安だ。「宗教対立を抱える国は一触即発だ」と、プラトー州知事顧問ティモシー・パーロング(平和構築担当)は言う。対立最前線の「ジョスで火の手が上がれば、すぐ国中に燃え上がる」。

それを承知で、ボコ・ハラムはジョスに進出してきた。実際、彼らの出現で平和共存の最後の希望を打ち砕かれた。

via ボコ・ハラムがあおるナイジェリア 憎悪の連鎖|日本版ニューズウィーク

ボコ・ハラムは、ISにも増して攻撃の目的がわからない過激派武装組織です。ナショナルジオグラフィック誌によると、ナイジェリア北部にイスラム国家を設立することを目的としていますが、政府組織や南北格差に対する強硬な抵抗運動という面がやはり強調されています。(参考:) 一説によると、裏に強大な政治家が付いているそうですが、真偽と目的の程はわかりません。(参考:) いずれにせよ、同胞をも見境なくテロや拉致の対象とするみせかけのイスラム原理主義の背後にある、西欧的価値観、文化、思想、教育への強い攻撃衝動の根底には、従来のアルカイダ系武装組織とは本質的に異なる暗い否定性を感じます。それは、未来の早過ぎた到来によるショック状態ではないでしょうか?(「左翼と反ヘイト、「未来の衝撃」が常態となった仮想化社会の人間と全体主義」)

私見では、 集団に掟を要請するのは自身や環境の持続可能性であり、法を要請するのは集団内の異種混淆性です。したがって、集団の掟や法のあり方にはその文明的な視野や射程が反映されていると考えるべきで、当然、無秩序や無法は文明史的には最低最悪なものにほかなりません。しかし、少なくともISに限っては多数の資金援助を受けて成立している団体でもあります。Gゼロ時代という今日の国際情勢はマクロにもミクロにもはじまっており、その根本には、資本主義と情報化の完遂によって世界が過剰化し、加速度的な新陳代謝の繰りかえしに人間の知性が追いつかなくなっている苦境があります。失われたのは、以前書いたとおり(「自己主導型知性、赤ちゃんと成熟した人間の知性はなにが違うのか?」)、文明や成熟の基礎を担ってきた理念と責任を産みだす心的原理なのです。


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Chika Hitujiya

I'm Futurist, producing "Whole Earth Museum" and co-producing art project Run! Miumushi-Kun & Garapadish. This common purpose is really simple. Making you enjoy and preserving the enough requisite knowledge & things for human to survive the crisis of period.
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