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一昨日、別のイベントで知りあった吉立開途さんからのお誘いで、現在起こっている世界・技術・人間の大変動について、東大駒場キャンパス近くの三文会さんにてお話してきました。今回使用したスライドと内容を簡単にまとめておきます。

動画冒頭で話しているとおり、タイトルに「条件」といれたのは、人間のひとひとりが願う状態でも、かくあるべきと追い求める理想でもなく、それら多様な幸福像や幸福感の追求を可能にする社会制度や設計、組織集団のマネジメントを問題にするためです。

また、人間の幸せと未来を結びつけたのは、「今ある幸せを大事にする」消極的な態度は、現在の人類史規模、今後起こりうる地球生命史規模での大変動で不可避的に困難もなのにならざるをえないと私は考えるからです。

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1986年から翌年にかけて連載されたアラン・ムーアの『ウォッチメン』は当時の驚くべき金字塔的作品です。ここで対象化されたのは、アメリカの20世紀史全体であり、ベトナム戦争後の荒廃であり、1960年代末以降の核戦争の危機に代表される仮想化の分断と完遂であり、コスチュームヒーローを通じて巧みに描かれた仮想化社会下の人間の本質的な心的類型です。以前書いたように(「UNIQLOの大転換と日本の有名大卒マイルドヤンキー群」)、アメリカの超格差社会の始まりはこの60年代にあることを政治学者のチャールズ・マレーが統計データを使いながら示しています。

私たちは、脳の構造上、具体的な「物」から抽象的な「事」まで全て事前に期しているものとの差でしか理解できません。現在起こっていることを適切に解するには、数字に落としこむか、情報の海からシグナルを見つけだすか、歴史的展開のなかに事象をおきなおすかしなくてはなりません。とりわけ、当時起こっていた時代変貌を日本はほとんど対象化してこなかった経緯があるので(「終わりなき日本の製造業神話、大手ハイテク企業は何故レタスを作りはじめたのか?」)、1990年代以前の社会状況がどんなものであったかを意識的に観ておくことはきわめて重要なのです。

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ラジオとテレビの商用放送がはじまったのが、1920、30年代です。従来のフィジカルな情報通信を越えた仮想的な技術がこれまでとは違う結びつきと社会運動を可能にした1960年代末と、オバマ大統領の登場からアラブの春、ホームグロウン・テロリズムを可能にした今日のモバイル・インターネット社会を比べると、類似の思わぬ多さに驚きます。もっともそれは、仮想化自体のリメイク構造によるのですが、スライドの右側を観てもらえればわかるとおり、半世紀前と現在とでは時代環境の決定的な違いも存在します。

経済学者のタイラー・コーエンが、現代の情報環境が「自閉症的な学習スタイル」を身につけないと認識困難なほどに過剰さをきわめていることは既に何度か書いたとおりです。(「左翼と反ヘイト、「未来の衝撃」が常態となった仮想化社会の人間と全体主義」) くわえて、ソーシャルメディアが乱立し、インスタントメッセンジャーアプリが普及した現在においては仮想化した人間関係から脱けだすことが難しくなっています。人間のことばの起源が猿の毛づくろいと原始的なゴシップにあると喝破したのは人類学者のロビン・ダンバーですが、原則的には身体的同調と共感にもとづく真綿のような絆と快楽の場所です。

また、サブプライム問題にみられる産官学の搾取構造にせよ(「環境順応型知性、周囲からの「期待」に圧し潰れる韓国の自殺者たち」)、アルゴリズムによる超高速取引が主流を占める金融市場にせよ(「金融戦争、第6番目の戦場と超高速アルゴリズムのジャングル化」) 、アメリカやロシアの安全保障が実施している情報監視体制にせよ(「マーク・ザッカーバーグが語るアメリカの情報監視体制の暴露の意義」)、自分たちではもはやどうすることもできない情報環境の危険なジャングルが出現しています。もちろん、アメリカ国内やヨーロッパ圏内、アジア圏内の金融危機がただちに世界へ波及するように、今日のハイパーコネクエィヴな世界においてはだれもジャングルから逃げることも隠れることもできません。


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つまり、従来のフィジカルな現実にくわえて、現代ではだれもが否応なく生きざるをないヴァーチャルな現実が厳然と出現しています。それも、ソーシャル化以前の公共性が守られていたネット空間ではなく(「ウェブの終焉、私的なものへと変更を迫られた巨人たちのアルゴリズム」)、仮想現実特有のより繊細な、より脆弱な、それゆえ多量の即時的なコミュニケーションがもとめられる原始的な村と、同様の理由でより巧緻な搾取の罠が周到に張りめぐらされ、予測不能なアルゴリズム災害が頻発する野生の自然にこそ私たちは今身をおいているのです。放射能汚染についてはいうまでもありません。

重要なことは、 多量で多様な新陳代謝を加速度的に繰り返し続けている現代の現実は、その高速性、不確実性によってわたしたちを「未来の衝撃」に陥らせ、仮想的な絆の快楽の泥沼にゆっくり沈んでいくか、リーマンショックで露呈したモラルなき現実主義の賢さで生き延びていくかの二者択一を迫ります。国際情勢では、政治学者のイアン・ブレマーの指摘する理念なきGゼロ時代の問題としてあらわれており、具体的にはヨーロッパにおける極右政党や急進派の台頭や(「EU懐疑派の躍進、英国独立党ナイジェル・ファラージェとポデモス党パブロ・イグレシアス 、アメリカの国家的な意思決定が党派対立で機能不全に陥っていることが挙げられます。

私見では、現代で成立や擁護のむずかしい苦境に追いやられているのは、紀元前5500年前後の黒海大洪水以来の文明史の蓄積の厚みであり、発達心理学者のロバート・キーガンのことばを借りれば「自己主導型知性」の根本にある意味の構成原理です。(「自己主導型知性、赤ちゃんと成熟した人間の知性はなにが違うのか?」) つまり、今日の現実のなかでは人格的成熟がむずかしく、価値判断や法の遵守、自己統制、意味構成が生存戦略上有効とはいえなくなっているのです。日本では、マイルドヤンキーやさとり世代という若者像、あるいは、現在ソーシャルメディアで蔓延しているアンチ主義や陰謀論としてあらわれています。




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以前から書いているとおり、最もマクロな現実問題としては数世紀内に地球生命が大量絶滅する危険性が強い説得力をもって指摘されています。(「メデア仮説、偽りの「母なる地球」を脱出するための宇宙開発事業の現在) ひとひとりの問題では、専門技術や知識を連続的に身につけていく多様多能性がこれからの知識労働者には確実にもとめられていきます。(「サイバー非社交性、情報技術が人間にもたらす3つの問題」) そして、両者のあいだには深刻な危機をもたらしかねない変動領域がいくつもあるのですが、内向きなGゼロ時代に国家間の協調行動は難しく、個々人もまた、賽が投げられている不確実な現実を直視し対策を講じようという動きもありません。

惑星規模の工学技術の開発から民主主義の復興、知識労働者の連続的な学習まで含め、私たちはこのような現実の過酷さといかに闘うことができるでしょうか? わたしはまず、知のあり方を全面的に刷新することが必要だと考えます。現在のあらゆる問題の根本には、現代の加速度的な新陳代謝のサイクルに認識の知が圧倒的に遅れていることがあります。そもそもをいえば、教養の研鑽や専門的な学びが大学でしかできないことに問題があるのではないでしょうか? そして、実際の大学教育は今日のおそるべき時代変貌に知の道具として耐えうる太く強いものであり続けているでしょうか?

あらゆる知や芸術は、根本的には実用の目的に始まりの根をもっています。文明史以前の狩猟採集時代では、天候を読むことや動物の群れの位置を知ること、季節や環境の変化をいち早く察知することはきわめて重要な技術でした。第2次デジタル革命によってアトムが新たな道具としてリノベーションされはじめている今、人間の知もまた、伝統的なあり方の形骸と崩壊を越え、地球生命史の始原からもう1度立ちあげる必要があるのではないでしょうか? 知をツールとして観て、ツールとして扱い、ツールとして相互に作りなおし続けること、私はこれを知のエンジニアリズムと呼んでいます。

(撮影:野間英樹 加工:坂田真奈美)

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Chika Hitujiya

I'm Futurist, producing "Whole Earth Museum" and co-producing art project Run! Miumushi-Kun & Garapadish. This common purpose is really simple. Making you enjoy and preserving the enough requisite knowledge & things for human to survive the crisis of period.
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