脳波最適化調整、仮想化時代最後の「金鉱」と第7番目の「戦場」


Brainwave_Optimization

人間の脳波を用いた装置がゲーム産業などをフロンティアに随分とはやい速度で進展しています。実際、測定された個の脳波をもとにカスタマイズされた「音」を聴くことで心のバランスを整える脳波最適化調整という治療法はすでに実践されており、[p2p type=”post_tag” value=”brain-computer-interface”]ブレイン・コンピューター・インターフェイス[/p2p]の開発とともに従来のコントローラーを不要とした新種のビデオゲームが市場に登場してきています。

懸念されるのは、ハッキングの可能性や技術の悪用、商業用ブレイン・スパイウェアによる生体データの過剰な自動収集などです。従来のいわゆる[p2p type=”post_tag” value=”big-data”]ビッグデータ[/p2p]は原則として位置情報などの個の内部や内面に関わらない小さな情報を対象にしたものでした。しかし、脳波情報からは現在の気分や感情、内面的な癖や中毒傾向までも読みとることができ、80パーセント以上の成功率で個人の特定さえできることがわかっています。



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「あいつ、私のコルベットに女を乗せてたのよ!」

ピンクのジーンズをはいた女性がついに爆発し、みんなに向かって泣き叫ぶ。「あの女、私の指を折ろうとしたした! 私の紙をつかんだ! だから私、やり返そうって……。私が買ってやったコルベットよ。なのに、あいつはクソったれ女を乗せた!」

ラリー・ウィナーマンが開くアンガー・マネジメント(怒りの管理)講座の1コマだ。叫んだこの女性は、裁判所の命令でこの講座を受講していた。

今どきのアメリカ人なら、一度や二度は似たような場面に出くわしたことがあるはずだ。全米高速道路輸送安全局によると、怒りが原因で起こった交通死亡事故は07年に103件だったが、11年には255件に増えている。12年に発表されたハーバード大学の調査では、アメリカのティーンエージャーの3分の2が「怒りの発作」で器物損壊や暴力的な脅迫をしたり、実際に暴力を振るったりしたことがあるという。

アンガー・マネジメントを指導するカウンセラーの需要も、これまでにないほど増えている。需要の急増は、いずれ治療の選択肢の拡大につながるかもしれない。最近の研究によれば、脳神経の「配線」を微調整して衝動的な行動を抑えるようにしてやれば、のろのろ運転の車を後ろから煽るようなルール違反の行為を慎むことができるかもしれない。

数年前から、脳神経の微調整に重点を置くアプローチも登場している。人間の脳は訓練によって帰られると信じ、しかるべき訓練で脳の働きを変えようと試みだ。

はやりの自己啓発セミナーのたぐいではない。最新の脳科学、とりわけ扁桃体と前頭葉の研究に基づいている。

扁桃体は記憶の整理や意思決定、感情的な反応に関与する部位だ。危険を察知する扁桃体の指示で全身にコルチゾールが分泌され、私たちは感覚を研ぎ澄まし、戦闘(または逃走)に備えることになる。

起こりっぽい人では扁桃体が過敏になっているのだろうと、研究者たちは考えている。だから些細なことでも危険と判断してしまう。一方、前頭葉(特にその前野)は脳の司令塔とも呼ばれる部位で、状況を総合的に判断して、取るべき行動(戦うか逃げるか)を決める。

要するに、感情に流されて行動せず、立ち止まって前頭葉の指示を待てばいい。マイアミ大学のチャールズ・カーバー教授(精神医学)も言う。「悪いのは怒りそのものではなく、それが引き起こす行動だ」

思い当たる節がある。実を言うと私には、腹が立つと(前頭野の制止を無視して)キーボードをたたき、友人たちに八つ当たりのメールを送ってしまう悪い癖があるのだ。

そこで私は一念発起、怒りの治療を受けてみることにした。訪れたのは、メアリー・アン・チャフィンの主宰する「ステラー・ブレイン・テクノロジーズ」のオフィス。

チャフィンが行うのは、「脳波最適化」という目新しい治療法だ。普通の脳波検査で脳神経の活動リズムを調べ、そのデータをコンピューターで解析し、その結果に応じて選択した音をイヤホンに送り込み、患者に聴かせるという方法だ。

鏡を使って、脳に自分の姿を見せてあげるようなものだと、チャフィンは言う。そうすれば脳は、自力で脳波バランスの乱れを修復するという。

例えば、私の場合は右脳の支配が強過ぎるのを修正したという。ちなみに、右脳の脳波が左脳に比べて強い人は感情に流されやすい(つまり八つ当たりメールを送りがちだ)そうだ。脳波バランスの乱れを脳に聴かせて修正を促す。それが脳波最適化の技法なのだろう。

脳波最適化の治療は、通常は1回200ドル前後の施術を10回繰り返す。だから私は、お試しだけで大きな効果は期待できないと思っていた。それでも2日後、空港へ向かうまでの空き時間を利用して再び受けに行った。

施術が終わると、チャフィンが私の脳波データをコンピューターの画面で見せてくれた。前回と比べて大きな改善が見られるという。1回目では左脳と右脳の脳波バランスは40対60で、右脳の方が強かった。ところが今回、左右の差は1桁台に縮まっていた。

その後、私はすぐ空港に向かい、飛行機に乗り込んだ。普段の私は飛行機が大嫌いだ。搭乗前の身体検査も不快だし、狭い座席に押し込められ、勝手に動き回れないのも腹立たしい。

でも今回は気分よく乗れて、客席乗務員とも楽しく話せた。5時間半のフライトはあっという間。上機嫌で外へ出たら出迎えの友人に笑われた。あんた、向精神薬でも飲んだの?

いや、今は脳波のバランスが最高なんだ。たぶんね。

via キレるあなたを治療できるか|日本版ニューズウィーク

ソチ・オリンピック同様、開催前からさまざまな醜聞で議論を呼んでいたW杯・ブラジル大会ですが、神経工学者ミゲル・ニコレリスによる脳波コントロール外骨格を装着した下半身麻痺の障碍者によるキックオフで無事幕をあけました。もちろん、強化外骨格のような[p2p type=”post_tag” value=”brain-machine-interface”]ブレイン・マシーン・インターフェース[/p2p]が社会に影響をおよぼすほどの質と量で市場におりてくるのはまだ遠い先の話でしょうが、脳波を簡易測定するヘッドセットやアプリ、ビデオゲームなどは想像以上に続々とあらわれてきています。(参考:

たとえば、上記引用の脳波最適化調整の新医療技術ですが、[p2p type=”post_tag” value=”amazon”]Amazon[/p2p]の商品推奨サーヴィスの開発に携わっていたリー・ガーディスが自身のPTSDを克服するために高度なコンピューティング技術と量子力学の応用により2001年に発明、ブレイン・ステート・テクノロジーズ社を創立し、現在ではライセンス供与を通じて全世界14ヶ国に121人のトレーナーがいるそうです。(参考:) 日本でも、都内をはじめ受けることができます。(参考:) 勿論、上記引用の右脳左脳という説明はいまいち科学的根拠に欠け、日本のテクノロジストのサイトもある種のいかがわしさを感じさせますが、以前書いたように(「現代技術と学習意欲、中国軍兵士の繊弱さと米軍の脳力強化プロジェクト」)、脳を強化するための[p2p type=”post_tag” value=”implant”]インプラント[/p2p]が限定的ながらもすでに実施されている以上、現代技術の進展としては何も不思議なことはないといえるでしょう。

日本では、ウェアラブルの認知度が3割を下回り(参考:)、以前から書いてきていますが(「ウェブの終焉、私的なものへと変更を迫られた巨人たちのアルゴリズム」)、[p2p type=”post_tag” value=”edward-snowden”]エドワード・スノーデン[/p2p]の内部告発やプログラミングの重要性がほとんど理解されていないことからもわかるとおり、現在起こっている第2次デジタル革命とウェブの終焉をきわめてナイーブに受けとめています。(「3Dプリンティング技術の未来ともの作りのパーソナル化革命」) この問題は歴史的心理的に根深いのですが、それでも、従来のビッグデータを越え、他の位置情報や金融関連のデータベースと結びつけられることでより強い威力を発揮する生体データの自動収集と防衛の議論が既にはじまっていること(参考:)、そして、[p2p type=”post_tag” value=”russia”]ロシア[/p2p]のクリミア併合に対する[p2p type=”post_tag” value=”america”]アメリカ[/p2p]の経済制裁であきらかになったあたらしい現代の戦場としての「金融」に次ぐ第7番目の戦場として「脳」がいずれあらわれることを(参考:)、認識可能なひとたちだけでもおさえておく必要があります。(「金融戦争、第6番目の戦場と超高速アルゴリズムのジャングル化」)

Ghost_In_The_Shell

今年4月、ゴルフのマスターズ・トーナメントで最年少優勝に手が届きかけたジョーダン・スピースが、あの場面でもしも「脳波モニター」を装着していたら……痛恨の池ポチャはなかったかもしれない。帽子にモニターを仕込み、ワイヤレスでキャディーのiPhoneのデータ処理アプリにつながって最高のプレーができる方法を教えてくれる、そんな装置だ。

20世紀においては、運動能力を向上させるものと言えばドーピングだった。それが今では、パフォーマンス向上アプリの時代に突入しつつある。

脳アプリが発達すれば、プロは浮き沈みなく常に最高のプレーを見せられるようになる。だが最も心躍るのは、この技術が素人の腕前を急激に上達させてくれることだ。プロの脳を模倣させるフィードバック装置が、何百時間もの地道な練習に取って代わるなんて、夢のような話だろう。

人間の能力を向上させる方法は、常に謎に満ちている。テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有だって、最高の投球をしたかと思えば、別の非には調子を崩す。同じ腕を持った同じ選手に波がある原因は、精神状態か、睡眠の質か、食事の内容か。この疑問は誰にでも当てはまる。ある日は仕事で絶好調に燃え、別の日に苦戦するのはどういうわけか。

その原因として学者やスポーツ指導者らが長年私的してきたのは集中力やリラックス状態、「ゾーン」に入ること、コラムニストのマルコム・グラッドウェルの著作でも有名になった「1万時間」の練習、といった要素だった。そこに突然登場したのが、プレーに関わる要素を測定し、記録する方法の数々だ。

心拍や発汗、呼吸や動作、睡眠の状態やその他の生物学的マーカーを絶えず記録する機器などは既に出回っている。それに加えて今年は、脳波を測定する装置も初めて一般化されそうだ。

脳波を「科学レベルで読み取り、バッテリーは5日間持続する装置を作ることができる」と、テキサス州のピーター・ボニンCEOは言う。同社は国防総省の防衛先端技術研究計画局(DARPA)と協力し、脳波測定装置を開発中。今年中の発売を計画している。

約10年前、DARPAは脳科学を実際の現場に応用する「実用神経科学」に投資しだした。05年以降、この研究は神経科学者のエイミー・クルーズが担当している。彼女が主に探索するのは2つの疑問だ。

1つは、プロの脳波には測定可能で明らかに際立ったパターンが存在するのか。2つ目は、それを素人に応用して短期間にパフォーマンスを向上させることができるのか、というものだ。

クルーズは射撃選手を対象に実験を行った。プロの射撃選手に脳波モニターを装着し、引き金を引く直前の脳波に共通するパターンを見つける。最高の状態にあるプロ選手は、自らを完全になリラックス状態に導く方法を熟知している。それは脳の信号にも現れ、心拍は減速する。

次にクルーズは、素人を2つの集団に分け、片方のグループに脳波モニターを装着。彼らの脳波がプロの脳波と同様の状態になった瞬間、引き金を引くように指示を出す。彼らの射撃技術は、もう一方の集団に比べて2.8倍のスピードで上達した。

これで2つの疑問はどちらも明らかになった。プロは他に比べて明らかに秀でた脳波パターンを有しており、ひとたびそれを特定できれば、素人の能力向上に応用することも可能だ。次いでに言えば、他のプロをさらに強くすることも。

科学と装置とデータがそろった今、それらを組み合わせた脳アプリも実現可能になった。

5年前だったら、無線通信のヘッドホンを着けて仕事をしていたら、スタートレックか、と同僚にからかわれただろう。でも今や、この技術は急速に研究が進んでいる。職場を見渡せば、脳アプリを頭に装着した同僚だらけ……という日が来るのもそう遠くないかもしれない。

via 脳アプリで最高のプレーを|日本版ニューズウィーク

エストニア出身の神経科学者[p2p type=”post_tag” value=”jaak-panksepp”]ヤーク・パンクセップ[/p2p]によれば、ヒトの憤怒という感情は、恐怖や肉欲とならび、[p2p type=”post_tag” value=”mammals”]哺乳類[/p2p]以前にまで起源を遡ることのできるきわめて古い脳の感情回路のひとつです。(参考:) 古代からの教えや宗教のいずれもが、哺乳類特有の感情回路のひとつである喪失の悲哀をくわえたこれらのふるい感情の抑制ないし克服を目的にしていたことからもわかるとおり、遥かいにしえの頃よりわたしたちの思考や行動はこの原始性に脳の奥深くから支配されてきました。その根本にはさらに、未来の予測しがたさと現実の動かしがたさがあるのですが、人類がこれまで蓄積させてきたあらゆる意味での「知」はこの克服に向けられているといっても過言ではありません。

脳波の測定技術を応用したアプリが、従来は「プロ」の独占物であった感情管理のノウハウをまさしくイノベーションによって破壊するように、脳波を用いた医療技術やインプラントは人類の「教え」や「知」をおなじく破壊するものであるでしょう。そうしたすでにはじまっているポスト仮想化社会において「知」は、すなわち、思想や科学、芸術はどのようなかたちでありえるのでしょうか? 少なくともわたしは、現代技術同様の工学的破壊性をもったものでなくてはならないと最近考えるようになっています。


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Chika Hitujiya

I'm Futurist, producing "Whole Earth Museum" and co-producing art project Run! Miumushi-Kun & Garapadish. This common purpose is really simple. Making you enjoy and preserving the enough requisite knowledge & things for human to survive the crisis of period.

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