イランの脱「ならず者国家」、ISISの武装蜂起を契機とした中東新秩序の可能性



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イラク過激派武装組織、イラク・シリアのイスラム国(略称 ISIS or ISIL)のマリキ政権打破をめざしたバクダッド侵攻が破竹の勢いで進んでいます。ISISは、香田証生さんの拉致斬首事件で話題になったザルカーウィー・グループの流れを汲む武装組織で、 首領アブ・バクル・アル・バグダディはその残虐さゆえにアルカイダからも「破門」され、同時にその影響力の強さゆえに「第2のオサマ師」と支持者から称される新世代のイスラム原理主義系テロリストです。

オサマ・ビンラディンの反米武装組織アルカイダは、1991年の[p2p type=”post_tag” value=”gulf-war”]湾岸戦争[/p2p]に起源をもち、ザルカウィー・グループもまた、2001年の[p2p type=”post_tag” value=”9-11″]アメリカ同時多発テロ事件[/p2p]以降の米国のアフガニスタン侵攻やイラク戦争への強い反発に起源があるのですが、3世代目といえるISISには、イスラム法や同胞意識を素朴な敵対心が越えているという意味で何らの思想性も見受けられません。しかし、彼らのその過激さ、野蛮な単純さにこそ、中東和平に繋がる触媒としてのかすかな可能性が隠れています。

イラク軍はモスルで完敗を喫した。兵士たちが街中で制服を脱ぎ捨て、逃げ出したほどだ。あとには、燃え尽きた装甲車の間に遺体が散らばっていた。手足を失った遺体もあった。

ジハード(聖戦)主義組織「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」の約1500人の武装集団が、イラク軍の15分の1以下の兵力であるにもかかわらず、軍用ヘリコプター「ブラックホーク」6機を奪ったほか、モスルにある銀行の金庫から莫大な金額を略奪したと報じられている。

彼らはモスルの刑務所にいた数千人の受刑者も解放した。ジハードの黒い旗が行政機関の建物の上に掲げられるなか、50万人に上る住民が安全な場所を求めて街から逃げ出した。

米軍の最後の部隊がイラクから撤退した2年半前、米国のバラク・オバマ大統領はこの国を「安定して自立した主権国家」と表現した。しかし今、ジハード主義者たちがイラクを引き裂きつつある。モスルはイラク第2の都市だ。6月10日、イラクのヌリ・アル・マリキ首相は非常事態宣言の発令を国民議会に要請し、国外からの支援を求めた。

その翌日、イラク・スンニ派の過激派と結束したISISは、サダム・フセインの故郷であるティクリートを掌握した。ティクリートは首都バグダッドから車で北へわずか2時間半の距離にある都市だ。

今後数週間で、ジハード主義者の集団は、勢力圏を広げすぎて倒れるかもしれない。屈辱を受けたイラク軍も、決意を新たに対抗することだろう。場合によってはモスルを奪還するかもしれない。だが、ISISの象徴的な勝利と果てしなく供給される若者を前にして、それはほとんど慰めにならない。

via モスル陥落:テロの新たな本拠地:JBpress(日本ビジネスプレス).

W杯ブラジル大会の大番狂わせが世界を賑わすなか、イラクの首都バグダットをめざす反マリキ政権で結託したスンニ派武装勢力の大きな、そして、残虐な強いうねりが世界を驚きにふるえあがらせています。今回の武装蜂起の中心勢力であるISISは、シリアの内戦で政府軍や同胞である反政府武装組織との戦いを通じて強化、拡大し、強奪した油田を資金源にイスラム・スンニ派国家の樹立をもくろむ新興勢力です。(参考:) 18日、英国のデヴィッド・キャメロン首相が、ISISはイギリスにも直接攻撃をおこなう計画があるとの見解を示しましたが(参考:)、ISISが欧米出身者も仲間に引きいれて軍事訓練を施している以上、統治者特有の被害妄想とはかんたんに片付けることはできないでしょう。

冷戦終結後、1993年のアルカイダによる世界貿易センター爆破事件を皮切りに、9.11テロ事件を受けて時の[p2p type=”post_tag” value=”america”]米国[/p2p]大統領ジョージ・W・ブッシュが「新しい戦争」と呼んだいわゆる非対称戦争が頻発するようになります。もちろん、米国にとってその初めての直面は[p2p type=”post_tag” value=”vietnam-war”]ヴェトナム戦争[/p2p]でしたが、対テロ・対ゲリラ戦に即応するための米軍のさまざまな改革や技術革新にも関わらず、2007年以降、アルカイダと関連武装組織による世界各地での攻撃件数はおよそ10倍に増えている現実があります。(参考:

以前から書いているように、ポスト情報化社会の鍵となるハイテク技術や改革はほとんどこの非対称戦争との格闘で生まれています。たとえば、組織体制(「ノアの洪水伝説、アメリカ大手企業はなぜ米軍特殊部隊に学ぼうとしているのか?」)、ロボット(「軍事用ロボットは戦争の何を変え、次世代ハイテク兵器は何を変えうるか?」)、情報監視(「マーク・ザッカーバーグが語るアメリカの情報監視体制の暴露の意義」)、そして、金融戦争(「金融戦争、第6番目の戦場と超高速アルゴリズムのジャングル化」)です。しかし、[p2p type=”post_tag” value=”amazon”]Amazon[/p2p]が独創的なFire Phoneを発表し、[p2p type=”post_tag” value=”google”]Google[/p2p]が自動車産業への新規参入を準備しているさなか、アルカイダ系組織のテロ攻撃の過熱化はかえって中東情勢の新秩序の可能性を高めてもいます。(参考:) ひとことでいえば、1960年代、あるいは、1990年代以降の仮想化の時代が終わりを迎えているのです。(「ウェブの終焉、私的なものへと変更を迫られた巨人たちのアルゴリズム」)

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キリスト教の世界もそうだが、イスラムの世界も一枚岩ではない。どちらも微妙複雑な対立を抱えているのだが、ここにきてイスラム圏の2大勢力間に新しい動きがみられる。運がよければ融和への道、一歩間間違えれば熱い戦争の道だ。

にらみ合うのは、イスラム教スンニ派の盟主サウジアラビアとシーア派代表のイラン。だがサウジの外相サウド・ファイサル王子は先頃、イランのジャバド・ザリフ外相を首都リヤドに招くと発表した。ザリフも応じる意向を表明しているが、イラン外相はリヤド訪問には一定の「準備」が必要とし、会談の議題を詰めるまでは日程を決められないと慎重だ。

イスラム圏では多数派を形成するスンニ派と、少数派ゆえに結束の堅いシーア派。両派の対立の根は深く、当然のことながらサウジとイランの溝も深い。一度の外相級会談で何らかの合意がまとまるとは思えない。

会談が決裂に終われば両国関係は一段と悪化すると懸念する声もある。何しろペルシャ人のイランとアラブ人のサウジは両国を隔てる海(日本では「ペルシャ湾」と呼ぶ)の故障についても反目し合っている。イラン政府はきない上映の映画中でも「アラビア湾」という呼称の使用を禁じており、従わない航空会社には領空通過を認めないとしている。

シリア内戦は、今やスンニ派とシーア派の代理戦争だ。バーレーンやイエメン、レバノン、イラクなどでも同様の戦いが展開されており、サウジ政府とイラン政府はそれを背後から操る重要な役割を果たしている。

イランの核兵器開発疑惑についても、サウジはこれを阻止しようとする中東各国の先頭に立っており、イランが核保有国になれば自分たちも核武装するとの意向を示唆している。

「サウジアラビアはいら立ちを募らせている」と、アラブ圏のある外交官は匿名を条件に語った。「退陣させようとしてきたアサドが持ちこたえており、シリアで自分たちが負けつつあると感じている。核開発問題についても、最終的にはイランの主張が通ることになるのではないかと恐れている。そして彼らは、こうしたすべてがアメリカのせいだと考えている」

サウジアラビア政府は、バラク・オバマ米大統領が化学兵器の使用について定めた「レッドライン(超えてはならない一線)」をアサド政権が踏み越えたにもかかわらず、米政府がシリア介入を回避したことに失望している。イランの核保有を阻止する上でのアメリカの「断固たる姿勢」も、急速に萎えつつあると警戒している。

だからこそサウジは、イランとの直接対話を探ることで局面の打開を試みようとしているのかもしれない。「イランの当局者が、両国間の交流を復活させたい意向を伝えてきた」と、サウド外相は語っている。「ザリフ外相が適切と考えるタイミングが来れば、いつでも彼を受け入れる用意がある」

実を言うと、対話の呼び掛けに先立ち、サウジの王室内では重要な序列変更があった。ムクリン・ビン・アブドルアジズ王子が王位継承権第2位に指名され、内相のムハマド・ビン・ナエフ王子は対シリア政策の責任者に任命された。一方、長年にわたり権力を独占してきた年長の王族たちは脇に追いやられた。

だが、もっと重要なのはイラン国内における権力争いかもしれない。そこでは穏健派のハサン・ロウハニ大統領と保守強硬派の革命防衛隊が、個々の政策やイスラム革命の方向性をめぐって対立している。

イラン国内で広く聴取されているイスラエルのペルシャ語ラジオ局のディレクターであるメナシュ・アミルによれば、ロウハニ陣営は国際社会に国を解放すべきだと主張している。国際社会による制裁が解除され、近隣諸国との関係が正常化されない限り、イランの存続を不可能とする立場だ。

一方で革命防衛隊は、外国の影響が国内に入ってきたら現在の体制を維持できないと恐れている。ロウハニの政治的な師とされるモハマド・ハタミ元大統領は「革命防衛隊との対決を望まなかった臆病者」だが、「ロウハニは彼らに立ち向かっている。勝てるだけの力はないかもしれないが、少なくとも勇敢にチャレンジしている」とアミルは言う。

アメリカのシンクタンク民主主義防衛財団のアリ・アルフォネフによれば、両国間の直接対話にも革命防衛隊との綱引きが影を落とすのは必至だ。サウジアラビアとの和解で「革命防衛隊が得るものは何もない」からだ。

そうであれば、革命防衛隊が何をしでかすかは分からない。直接対話を妨害するためにサウジアラビア領内でテロを起こすかもしれない。あるいはどこか(例えばイラク)で、スンニ派とシーア派の宗派戦争に火を付けるとか。それほどまでに両派の、両国の憎悪は深い。

via イスラム2大勢力の神経戦 : 日本版ニューズウィーク

結論を先に書くと、以前少しふれたことですが(「セブンプレミアム戦略とナレンドラ・モディ新首相を押しあげたインド国民の消費欲望」)、[p2p type=”post_tag” value=”india”]インド[/p2p]の[p2p type=”post_tag” value=”narendra-modi”]モディ[/p2p]首相とパキスタンのシャリフ首相がおこなったような「雪解け」の会談がイランとサウジアラビアで実現し、現状以上の関係改善が起こりうる可能性がISISを契機にしてわずかながらも発生しています。というのも、50年以上も反インド思想が根幹を成してきたパキスタンでは現在世論から軍部にいたるまで自国の危機認識に変化が生じており、それは、真に最大の敵は国外のインドではなく、自国内で活動する過激派武装組織タリバーンであるというものだからです。

イラクの混乱は、イスラム宗教内のシーア派とスンニ派の対立に還元できるものではありません。(参考:)しかし、今後の混乱を左右するポイントをあえて3つにしぼると、まず、アメリカに支援要請をだしているマリキ政権が米国からの支援条件である宗派・民族間不和の政治的解決の意志を示せるかどうか。しかしこの点は、17日にまがりなりにもシーア派、スンニ派、クルド人の共同演説をおこない(参考:)、アメリカもまた、19日にイラク軍を支援するための作戦本部の設置と最大300人の軍事顧問を現地に派遣することを発表しました。現時点では、米軍による空爆の可能性については明言を控えています。

ふたつめのポイントは、アメリカとイランの共同作戦の実現可能性です。現在の米国内の世論では、人命を危険に晒すような軍事行動はまずとれません。そして、イラクが自国以外の軍の派遣を受け容れられる可能性があるのはおなじシーア派国で親しい関係にあるイランだけです。実際、アメリカ政府はイランとの協議を水面下で進めており(参考:)、自国の経済成長のために国際社会の復帰と核協議の早期妥結をめざしている穏健派のハサン・ロウハニ大統領はまちがいなく外交カードとして有効利用しようとするでしょう。しかし、アメリカ国内ではチェイニー元副大統領に代表される保守派層(参考:)、イランでは革命防衛隊などの強硬な反対勢力がありますから、この点の実現はかならずしも明確なものではありません。

そして、最後の、最も不確かなポイントは、サウジアラビアを盟主とするスンニ派諸国のISISと米国(とイラン)の軍事介入に対する反応です。まず、今回の武装蜂起はイラクの排外主義的なシーア派政権を打倒するものなのでサウジ側の意に沿うものですが、中心勢力であるISISについてはその新国家樹立の理念と過激派過ぎるがゆえの問題で以前からテロリストに認定しており(参考:)、そのため、サウジ側はこの動乱に関してあいまいな態度をとらざるをえない状態にあります。(参考:10) しかし、逆をいえば、マリキ政権を解体し、シーア派、スンニ派、クルド人の3者が比較的納得できる今後の政治体制のヴィジョンを明確に示し、かつ、ロウハニ大統領(が主導権をにぎっている限りにおいて)の「従順な」イランを外交的にみせることができれば、今回のISISの武装蜂起を契機にあらたな中東情勢の新秩序に漕ぎつけることは不可能ではありません。

勿論、ポジション的に米国のオバマ大統領以外にこの任務の適役はいませんが、同時に、シリア内戦で手痛い失態を既に犯している彼ほど不適格な大国の指導者もいないでしょう。しかし、サウジアラビアをはじめ、世界各国から信頼を失ってきているアメリカにとってもまた、政治学者のイアン・ブレマーの主張するGゼロ時代を乗りきるためのビッグ・チャンスであることも同時に事実なのです。いずれにせよ、ポスト仮想化時代の新秩序をめぐる混乱と政治的挑戦が酸鼻をきわめるイラクの武装組織を軸にまわりはじめています。

Chika Hitujiya

I'm Futurist, producing "Whole Earth Museum" and co-producing art project Run! Miumushi-Kun & Garapadish. This common purpose is really simple. Making you enjoy and preserving the enough requisite knowledge & things for human to survive the crisis of period.

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