ビルボードジャパンの挑戦と限界、情報環境を編集するデジタル時代のサバイバル術


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政治ニュースのバイラルメディアIJReviewが驚異的な伸びを示している。Quantacastの調査によると、3月の月間ユニーク数が約2000万に到達し、この7カ月の間に10倍近くも増やしている。
ソーシャルメディアが政治的分極化に拍車をかけているとよく言われている。ネットでは好きなものしか接触しない傾向が強まっており、保守系ニュースサイトとリベラル系ニュースサイトが分断され、それぞれの閉じた中だけで「いいね!」を交わし合いながら拡散し、増幅していく流れが見られる。保守系の政治ニュースサイトであるIJReviewが急浮上したのも、そうした流れに乗ったのだろうか。米国の保守系政治ニュースサイトとして、Fox News, The Blaze, The Drudge Report, Newsmaxに次ぐ5番手に早くものし上がってきた。

このようなバイラルメディアがすぐには政治の世界で大きな影響力を及ぼさないだろう。でも、若者を中心に一般大衆が、伝統的なマスメディアよりもソーシャルメディアなどを介してニュースを選び閲覧するようになってきているだけに、バイラルメディアを介して政治ニュースと接触する機会も増えてきそうだ。

via 保守系政治ニュースのバイラルメディア「IJReview」、米国で一気に頭角を現す | 田中善一郎.

以前、情報技術の浸透が人間にもたらした問題を扱った記事で、2025年の働きかたを予想した[p2p type=”post_tag” value=”lynda-gratton”]リンダ・グラットン[/p2p]の「連続的スペシャリスト」という概念をひきあいにだし、1990年代以降の本格的な情報化社会においては高度な電子計算機器やソフトウェアベースの新技術がつぎつぎと登場することで、デジタル技術を貪欲に修得していけるひととそうでないひととでは社会的、経済的格差が自然淘汰のように拡がっていくことを示しました。(「サイバー非社交性、情報技術が人間にもたらす3つの問題」)

そして、個の知性に焦点をしぼれば、20世紀初頭の量子力学の理論的完成以後の問題として、数学的にしかあらわせられないきわめて微細な物理的現実が出現し、今日の問題のほとんどがこの急激な[p2p type=”post_tag” value=”reality”]リアリティ[/p2p]の深化、変貌、情報化に端を発しているのですが、この際にふれられなかった重要な問題のひとつがいわゆる情報リテラシーの急速な格差拡大です。すなわち、情報技術の普及と多様化によって働き手としての社会淘汰がはじまったように、広い意味での知識の収集、選別、発信、交流の今日的な教養獲得のスキルにおいてもいわば情報淘汰が静かにはじまっているのです。

以前から書いていることですが、[p2p type=”post_tag” value=”social-media”]ソーシャルメディア[/p2p]を代表とするサイバー空間の原理的なコミュニケーション範囲は潜在的な可能言語圏にあります。(「震災の避けがたい忘却に遺す幾つかの思考その意味で、日本語という独特な言語を母語とするわたしたちはある種の隔絶を生きざるをえなくもあるのですが、原理的にはあくまで英語で接続し、交流しうる範囲が今日の基本であり、この原則を見落とすと世界的な現象としての2極化構造を正確にとらえられなくなります。(「UNIQLOの大転換と日本の有名大卒マイルドヤンキー群」)そして、日本の音楽業界、レコード産業全体にはこの錯誤と閉鎖性がよくあらわれていて興味を惹きます。(「SpotifyとPandora、日本の音楽リスナーはどこに消えたのか?」)

DanielEk_MartinLorentzon

インターネット経由で音楽を携帯電話やパソコンに届ける音楽配信市場が大きく変わろうとしている。主流のダウンロード型に加え、定額を払えば聴き放題になる「ストリーミング」サービスが台頭。海外の無料サービスの日本進出も間近とされる。
「早ければ夏前に始まるらしい」。国内レコード会社の間で会話が飛び交う。話題の主役はスウェーデン発祥の無料音楽配信サービス「スポティファイ」だ。

曲の間に音声広告が入るが、無料で約2千万曲が聴き放題。欧米などで2400万人の利用者を抱え、月9.99ドル(米国)の有料版も600万人が使うといわれる。

無料配信は利用者が楽曲を聴けば、レコード会社に広告収入の一部が分配される。一方でCDの売り上げ減を招く可能性もある。それでも「参加しない手はない」(国内レコード会社)と多くの関係者は好意的。音楽市場の縮小に強い危機感があるためだ。

via 無料の「黒船」近く到来、変わる音楽配信:日本経済新聞.

世界の音楽市場の動きからはすでに周回遅れの位置にある日本の音楽産業が今更[p2p type=”post_tag” value=”spotify”]Spotify[/p2p]に「参加しない手はない」とのたまっていることには笑えますが、さておき、2000年代後半以降のソーシャルメディアの興隆とレコメンデーションサーヴィスの登場と波及により、今日ではじぶんの情報環境を編集すること、同時に、[p2p type=”post_tag” value=”big-data”]ビッグデータ[/p2p]をもちいたアルゴリズム解析によって意図せず編集されていることに注意しなくてはならない時代になっています。情報の探索、比較、分析に重点がおかれていた従来の情報リテラシー概念では、情報環境を編集し編集される重要性が考慮されていないのです。

脳神経科学の[p2p type=”post_tag” value=”mirror-neuron”]ミラーニューロン[/p2p]の研究では、大学教授の顔とフーリガンのどちらを事前に想像するかで知能テストの成績に有意差のでることが実験で証されています。つまり、程度の差こそあれ、以前書いたように[p2p type=”post_tag” value=”mammals”]哺乳類[/p2p]であるヒトは避けがたく周囲との身体的模倣の連鎖を生きざるをえないのですが(「創造性の秘密、スーパーミラーニューロンと急激な気候変動」)、従来のフィジカルな環境をじぶんで操作することは道義的にも実際的にもむずかしい一方で、今日のデジタルな情報環境ではじぶんで編集することが良くも悪くも容易になっており、隔絶された安寧に閉じこもることも多種多様な情報で溢れさせることも可能な時代になっているのです。

勿論、以前紹介したように(「相互扶助感情とグレート・リセット、クマムシ博士に書評を拾っていただきました。」)、今後深刻化してくる世界的な2極化構造をクマムシのように戦略的鈍感さで生きることも、上位5パーセント以下の「スーパー知的労働者」を猛烈にめざすこともそれぞれの自由です。しかし、本来は創造性に富んでいたはずのひとが、フィジカルな人間関係の延長としてのソーシャルメディアの安寧や世間話の蒙昧さに沈んでいくのを何例も観てきた僕としては、[p2p type=”post_tag” value=”facebook”]Facebook[/p2p]や[p2p type=”post_tag” value=”twitter”]Twitter[/p2p]であわせて100以上のことなる種のメディアや研究機関から情報がはいるように環境を編集することを強く推奨します。それこそレコメンデーション機能でいくつかのアカウントやページに反応すればあとは芋づる式に釣れるのですから……。

BillboardJapan

ネット時代に合った新しい音楽の総合人気チャート作りに米ビルボードが挑戦している。上位100曲を毎週紹介する「ホット100」を昨年12月、国内向けに一新。CD販売やネット配信、ラジオでの再生回数に加え、CDレンタルやミニブログツイッター」の動向も加味して算出するよう改めた。
「日本の音楽ファンが好んで聞いている楽曲が何かを正確に反映した総合チャートを作りたかった」。こう語るのは、ビルボードの日本事業を担当する阪神コンテンツリンクの礒崎誠二次長だ。

オリコンが発表するCD販売チャートを眺めると、ほぼ上位を毎週アイドルが独占している。理由の一つが握手券の存在だ。ここ数年、アイドルが握手会の入場券をCDに同梱するのが常態化している。枚数が多いほどアイドルと語る時間が長くなるため、握手券目当てに何枚もCDを買うファンも少なくない。

「音楽は国ごとに聴くスタイルが違う。日本型の計算式を考え出す必要があった」(礒崎次長)。日本版ホット100は08年に始まったが、当初からラジオの再生回数とCD販売を組み合わせている。10年にはiTunesストアの販売動向を追加。昨年12月にCDレンタルとツイッターも対象に加え、指標を5つに増やした。「ようやく消費者の肌感覚に合うチャートになり、消費者も遠巻きながらその輪に参加している感覚で楽しんでもらえる」(礒崎次長)レベルに達したとの実感がある。

礒崎次長は「さらに正確に世相を反映すべく精度を高めたい」と将来展望を明かす。アップル以外のネット配信事業者にアプローチし、売り上げデータを供給してもらえないか交渉を進めたい考えだ。ユーチューブの再生回数など、米国で対応済みの指標についても国内のデータが入手できないか、グーグルなどに打診していく。

「最終的なゴールはワールドチャートの創出。その前に『環太平洋版ホット100』を数年後に作りたい」(礒崎次長)。ビルボードはカナダなどでも音楽チャートを集計しており、各国のデータを合算すれば原理的には国境を越えたランキングが作り出せる。

海外の大物タレントと同じ土俵で勝負できるワールドチャートができれば、日本人アーティストが海外を意識した創作活動を始める契機になるはず。

via AKB人気は本当か 新世代の音楽チャート作れ:日本経済新聞.

以前、日本の音楽チャートの遅れを強く批判する記事を書きましたが(「欧米の現代音楽チャートの進歩と日本の後進性」)、ビルボードジャパンがこうした試みをおこなっていることを恥ずかしながら知りませんでした。勿論、高く評価します。が、現在のビルボードジャパンでは気になる楽曲の購入はできても視聴ができません。本家ビルボードではSpotifyと[p2p type=”post_tag” value=”pandora-radio”]Pandora[/p2p]を通して聴くことができます。後のふたつに慣れた僕としてはこの差はひじょうに大きいのですが、Spotifyの正式上陸にともない、ビルボードジャパンの画竜点睛とさらなる展開が日本の音楽産業に強い刺激をあたえることを期待します。

19世紀半ばの気候の安定化と温暖化により、万人による万人の闘争という誤った自然認識にもとづく競争社会と科学万能主義はわたしたちの[p2p type=”post_tag” value=”socialized-mind”]哺乳類由来の知性[/p2p]を壊してきました。現在では、以前書いたように情報化社会特有の[p2p type=”post_tag” value=”zombie”]ゾンビ[/p2p]のような繊弱な知性に陥るひとが急速にふえています。(「現代技術と学習意欲、中国軍兵士の繊弱さと米軍の脳力強化プロジェクト」)何よりも重要なのは、海を渡り、長きにわたる氷河と気候の過酷なランダムネスとたたかってきた狩猟採集時代の基本にたち返り、ロマンチックな懐古趣味に陥ることなく、情報化社会、ポスト情報化社会のきわめて迅速でかつ複雑な変動を察知していくことなのです。

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Chika Hitujiya

I'm Futurist, producing "Whole Earth Museum" and co-producing art project Run! Miumushi-Kun & Garapadish. This common purpose is really simple. Making you enjoy and preserving the enough requisite knowledge & things for human to survive the crisis of period.

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