相互扶助感情とグレート・リセット、クマムシ博士に書評を拾っていただきました。


DaikiHorikawa

拙著『クマムシ博士の「最強生物」学講座』が出版されてから半年が経過しました。おかげさまで各界で好評をいただいています。

クマムシのゆるキャラを商品化して研究費を捻出しようとする奮闘ぶりも語られる。研究対象並みのしぶとさが頼もしい。朝日新聞

極低温や真空にも耐える驚異の生物を紹介。過酷な環境に居場所を見つけるしぶとい生き方を見習いたい。読売新聞

端的に言えば、なんだかむちゃくちゃ面白い生物科学エッセイ、である。最新の科学トピックを読者に引きつけつつ紹介する話術も実も巧みでわくわくする。土屋敦氏: HONZ

常識破りの極限生物とその生き様をわんこそば感覚で紹介する本なのですが、同調圧力が強く、単一視点に平均化されがちな今日の日本社会への抵抗の意志に満ちています。文体も良い。羊谷知嘉氏

via 『クマムシ博士の「最強生物」学講座』のKindle版が出ました – むしブロ.

クマムシ博士こと堀川大樹さんについては、ジュンク堂の新刊棚でその文体の良さに驚いてからというもの、過去のブログやクマムシ党総裁の都知事選出馬の際にFacebookなどで記事を書いてきましたが、そうした面白い試みをなされている方に僕のツイート批評を拾ってくださったことは大きな喜びであり、堀川さんに深く感謝する次第です。

詳しいことはご著書に譲るとして、堀川さんはアカデミアから自立するためのサイドワークとしてむしブロむしマガクマムシさんといったキャラクタービジネスを展開されています。研究者としての最終目標はクマムシの乾眠能力を人間に応用した「人類クマムシ化計画」だそうですが、エンドエイジングを理論的に打ちたてた老年学者の[p2p type=”post_tag” value=”aubrey-de-grey”]オーブリー・デ・グレイ[/p2p]をおもわせる発想の壮大さからクマムシさん事業まで、僕自身見習うべきところの多い優れた方です。今後のますますの活躍をご期待申し上げます。

KumamushiSousai

みなさん、こんばんは。クマムシ党総裁のクマムシさんです。このたび、東京都知事選への出馬を表明しました。本日は、東京を、そして日本をよりよくするためにどうしたらよいかについて、我が党からぜひ提案させてもらいたいのです。

現代社会には、IT革命を発端としたグローバル化の波が押し寄せています。この大きな変化は世界のフラット化をもたらし、国境に関係なく労働機会が与えられます。簡単にいうと、日本のような先進国の富が途上国に流れていくのです。

富が流れることで、途上国の人々はより豊かになっていく。とてもいいことですよね。でもその一方で、相対的に日本の経済力は低下していきます。グローバル化によるこの流れは、もう止められない。

一昔前のように、就職後の年数に応じて会社から支給される給料が上がり続けることもなくなっていくのです。今の若い人たちは、自分の親の世代と同じことをして経済的に豊かになれる保証は無いのであります。というか、まずありえないと思っていい。

もし、みなさんが経済的な成功を目指すのであれば、優れたクリエイティビティを身につけて世の中に新しい価値を作り出し続けなければならないのです。これが結構、大変なことなんです。本当に。

しかし、です。このような人材、つまりトップレベルのスーパー知的労働者になれる人は、現実にはごく一部しかいないんです。その他の大半の人は、単純労働者になる、と。そして、前者と後者の収入の格差は、今後どんどん広がるのであります。

このような状況の中、「みんな頑張ってスーパー知的労働者にならなければダメだ」という風潮が世の中にあるように感じます。「これからは皆が創造的な仕事をできるようにならなくてはいけない」というわけです。

こういう風潮だと、頑張らない人は「努力が足りない」「怠けている」「負け組」などというレッテルを貼られがちです。でも、「頑張る自由」があるのと同時に、「頑張らない自由」もあってよいではないですか。

断っておくと、私は頑張っている人のことが好きだし、応援しています。ここでは、マクロな視点から意見しています。マジョリティに焦点をあてているんです。「クマムシは頑張ってる人間を見下してる」なんて誤解はくれぐれもせぬようお願いします。

話を戻しましょう。現代の若者が抱える漠然とした不安感、そしてこの国を覆う閉塞感は、世の中に横たわる「みんな頑張って成功しなければならない」という同調圧力に起因している、と。そう感じるわけです。みなさんもきっと同感でしょう。

ストレスを多く感じる社会と、リラックスしていても許される社会、どちらが住みやすいでしょうか?そりゃもちろん後者です。つまり、私はこう思うのです。「具体的な政策云々よりも一人一人の心の持ち方が変わる方が、国全体を良くする」と。

そういう意味では、日本はもう少しギリシャやスペインを見習っていい。あれだけ経済危機だなんだと言われているけど、ハッピーそうな人々はきわめて多いですから。これはもう、日本と比べると有意差ありのレベルだと断言できますよ。ええ。

ということで、日本国民のみなさんに、我が党から提案させていただきたいことがあります。それは「クマムシのように生きよう」ということです。日本国民は、我々クマムシを見習うべきなんです。

via クマムシさんの出馬表明 : クマムシさん日記.

クマムシ党総裁からのユーモアに溢れた日本の若者への提案の続きは元の記事を読んでいただくとして、以前からなんども書いてきたとおり(「UNIQLOの大転換と日本の有名大卒マイルドヤンキー群」)、現在の社会内部で進んでいる世界規模の階級分断ないし再編成の流れはきわめて深刻な問題です。とりわけ、問題の視野を日本に限れば、チャールズ・マレーの謂う「新上流階級」を形成して経済成長の原動力にさせるに足りるだけ、他人の上昇志向や成果主義を認められず、また、[p2p type=”post_tag” value=”india”]インド[/p2p]や[p2p type=”post_tag” value=”china”]中国[/p2p]、ナイジェリア、東南アジアのような旧後進国の位置にあまんじていたわけでもない日本の経済水準や旧先進国民としての生活水準は、クマムシ党総裁が賢くも指摘しているように、今後はもう落ちていくだけなのです。

勿論、国家としてはこの撤退戦を粘りづよく戦い抜き、次世代、あるいはそのまた次の世代に好機がめぐってくるまで乾眠状態に入ったクマムシのように耐え忍ぶ以外に途はないでしょう。また、個人の問題としては、2025年の働きかたを予想した[p2p type=”post_tag” value=”lynda-gratton”]リンダ・グラットン[/p2p]にふれた記事で書いたとおり(「サイバー非社交性、情報技術が人間にもたらす3つの問題」)、クマムシ党総裁の謂う「スーパー知的労働者」として海外移住をめざすことです。多くのひとは聴く耳をもたないでしょうが、情報化時代の優秀な技術者や頭脳労働者がこぞって移住をはじめていることは、2000年代初めから都市社会学者の[p2p type=”post_tag” value=”richard-florida”]リチャード・フロリダ[/p2p]が指摘してきた事実です。

本の内容は時間の問題で読めていませんが、著述の文体の水準の高さから今日の高度な知性をもっていることが推し測れるリチャード・フロリダは、2011年刊行の新著『グレート・リセット』でひとつの壁を破ったといっても良い変貌を遂げます。新しい経済と社会は大不況から生まれる、と銘打った副題からもわかるとおり、彼をより新しい強靭な知性と再建の思想に向かわせたのは、[p2p type=”post_tag” value=”subprime-lending”]サブプライムローン[/p2p]問題に端を発する世界金融危機、世界同時不況の凄惨さでした。そして、興味深いことに彼とおなじ文体上の知性の変貌と発想の深化を同時期に遂げたのが、以前紹介しましたが(「次世代の宇宙服BioSuitとポスト情報化社会をかたち作る科学技術)、哺乳類史1億数千年来の共感能力にもとづくモラルの再建をめざしている霊長類学者の[p2p type=”post_tag” value=”frans-de-waal”]フランス・ドゥ・ヴァール[/p2p]です。

ヴァールのTED講演は、実験映像に登場する動物たちが可愛いことも含めて大変におもしろいので是非観てもらいたいのですが(日本語字幕付きはこちら)、彼らと同じ[p2p type=”post_tag” value=”mammals”]哺乳類[/p2p]、[p2p type=”post_tag” value=”primates”]霊長類[/p2p]、[p2p type=”post_tag” value=”anthropoid”]類人猿[/p2p]のなかで進化を遂げてきたヒトとして、学習能力や[p2p type=”post_tag” value=”socialized-mind”]社会的知性[/p2p]の根幹を成している共感能力がわたしたちの教養や社会組織に組みこまれていないことに強い危機を覚えます。もっといえば、自分自身や知人友人、観察できるかぎりの人間の行動を観て、社会的に成熟したとされるひとたちのあいだでも共感の相互扶助の原理が働いているでしょうか。以前書いたように(「震災の避けがたい忘却に遺す幾つかの思考」)、常には働いていないからこそ「災害ユートピア」と云う概念が逆説的にありうるのではありませんか?

フランス・ドゥ・ヴァールの新著『共感の時代』の通奏低音を成すこうした危機意識はひじょうに根が深い厄介な問題です。まず、[p2p type=”post_tag” value=”reality”]リアリティ[/p2p]の変質と云う意味で、1960年代以降、1990年代以降の情報化社会の問題があります。くわえて、ヴァールが特に批判している20世紀前半の科学原理主義、わかりやすく例を挙げれば、哲学における論理実証主義や心理学における行動主義のように、懐疑の知性原理だけを基礎にした思考で「法」のような秩序の意味構成や「心」のような意識下の相互的な身体現象を否定した思想の功罪、更には、19世紀半ばからの「適者=強者生存」とする社会進化論者の帝国主義や経済競争を擁護するための誤った自然認識にもとづいたイデオロギーの弊害が、今日にいたってもなお続いています。

相互扶助という観点からこの誤認に否を唱えた最初のひとりは、ロシアの無政府主義思想家[p2p type=”post_tag” value=”pjotr-kropotkin”]ピョートル・クロポトキン[/p2p]です。彼は、東シベリアと北満州の旅行を通じ、本来の動物たちが情け容赦のない自然環境のランダムネスと過酷な闘いを強いられているのを目撃し、個体同士の自然なあり方はむしろ相互扶助による協調行動にあると喝破したのです。実際、列強や先進国で「適者=強者生存」の思想が流行っていた時代、すなわち、19世紀後半から2000年代末までは、14世紀半ばから続いていた急激な寒冷化と火山の噴火などにより気候環境が安定しなかった小氷期が漸くおわった時代で、要するに個体同士の生存競争という「自然状態」が実際の自然環境にゆるされていたに過ぎなかったのです。

近年の気候変動を受けて、気候学者は温暖化の認識を「異常化」に修正しています。そして、以前から関心をもって書いてきている宇宙を別にすれば(「宇宙開発事業と天然ガス資源、クリミア問題をめぐる世界情勢の深層」)、3000年前や中世の頃とは違い、今の地球にひとの逃げ場所などは残されていません。知的乾眠に入るにせよなんにせよ、社会の内部と外部で既に起こっている危機の徴を察知し、相互扶助の協調行動を集団で起こしていくことが生き残るためには必要なのです。

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Chika Hitujiya

I'm Futurist, producing "Whole Earth Museum" and co-producing art project Run! Miumushi-Kun & Garapadish. This common purpose is really simple. Making you enjoy and preserving the enough requisite knowledge & things for human to survive the crisis of period.

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