極右政党の躍進と奇跡を起こす壊し屋、仏国民戦線とイタリア新首相マッテオ・レンツィ


MarineLepen

保護貿易、移民排斥、反ムスリム、反ユーロ——フランス国民の3分の1が、こうした右翼的な政策を支持しているとなれば、この国は大きな問題を抱えているということだ。

ルモンド紙が2月に行った調査で、極右政党「国民戦線」の政策に共感すると答えた人は34%に上った。マリーヌ・ルペン党首率いる国民戦線は昨年来、急速に支持を拡大。特に高齢者や24歳未満の若者に人気だ。

ルペンは11年に、路上で礼拝するイスラム教徒たちはかつてフランスを占領したナチスと同じだと発言したような人物。そんな差別主義者が党首を務める国民戦線は、フランスの「イスラム化」はごめんだと叫び、少数民族ロマの排斥や通貨フランスの復活を訴える。

世論調査機関IFOPの調べでは、極右の過激なイデオロギーはフランスで市民権を得つつある。イスラム教徒とユダヤ人の人口がヨーロッパ最大規模であるこの国で、55%が「移民が多過ぎる」「ムスリムの権利を与え過ぎだ」という国民戦線の考え方を支持した。

国民の3分の1の心が極右に向かいつつあると同時に、イスラム過激派に傾倒する人たちも目立つ。時に右翼とイスラム原理主義が徒党を組むこともある。初等教育で男女平等を教えることの義務化に反発するイスラム原理主義者と、超保守のカトリック教徒(国民戦線の支持層)は、一緒にデモに参加するなどの活動を行っている。

フランス政府によれば、約700人の若者が内線の続くシリアへ飛び、彼らにとっての「聖戦」に参加しているという。その多くがイスラム教に改宗し、過激派思想に傾倒する者たちだ。

via フランス政教分離が危機に(エマ・ケイト・サイモンズ)|日本版ニューズウィーク

僕自身もかなりはやい段階で書いていますが、最近の国際情勢の焦点はなんといってもクリミア併合をめぐるロシアと欧州、米国の政治的、経済的問題と(「ロシアのクリミア侵攻は東アジアに火を点けるのか?」)、マレーシア航空機遭難事件で浮き彫りとなった中国と東南アジア諸国の軍事的緊張関係(「STAP細胞騒動とマレーシア航空機遭難事件にみられる腐敗と混沌の情勢」)ですが、日本ではあまり話題にならないながらも注目すべき出来事が欧州で起こっています。

まずひとつは、[p2p type=”post_tag” value=”france”]フランス[/p2p]の極右政党、国民戦線の躍進です。上記引用の記事は、4月1日発行の日本版ニューズウィーク誌からの引き写しですが、3月30日におこなわれた統一地方選挙の結果が微妙な時期のずれで反映されていません。AFP通信によれば、約3万6000の自治体の首長と議員を選ぶこの選挙で、国民戦線は1400議席超を獲得し、少なくとも11の自治体で首長に選出されたそうです。

Front National

先月30日に決選投票が行われたフランスの統一地方選挙で、極右政党・国民戦線(FN)が歴史的躍進を遂げたことについて専門家らは、仏国民の多くが依然、FNに敵対的でありながらも、やむなくこの反移民政党を主流に受け入れつつあることの表れだと分析している。

この結果を受けて、FN党員が市長に選出されたボーケール(Beaucaire)市に対し、ベルギーの都市が即刻、姉妹都市関係を解消するなど、国外では激しい怒りが巻き起こっているが、当のフランス国民はまったくといっていいほどショックを示していない。

日刊紙パリジャン(Le Parisien)が先月31日に掲載した世論調査では、回答者の60%近くがFNを主流派政党とみなすべきだと考えている一方で、FNから首長や地方議員が選出されることは行き過ぎで「悪いこと」だと62%が考える、矛盾した結果が出た。

大方の見方では、FNの躍進を招いたのは、フランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領の社会党政権に対する世論の不満に加え、高い失業率や低成長、国内治安といった問題を解決する力がないとみなされている既存の主流派政党に対する漠然とした怒りだ。

しかし95年や97年の地方選の際にFNが1200議席を獲得し、4自治体の首長に当選したときの衝撃と比べられるが、今回は過去ほどの驚きは感じられない。

仏国内の衝撃が少ないのは、父親のルペン氏のころとは党のイメージが変わったからだと、仏世論研究所(IFOP)のジェローム・フルケ(Jerome Fourquet)氏もいう。その上、当時からは20年が経ち、世論が「慣れてきた」側面もあると指摘する。「日々の積み重ねで受容されてきた感がある。党の横顔も以前よりずっと柔らかく、候補たちも短気ではない」

via 極右政党をやむなく受け入れるフランス – 国際ニュース:AFPBB news

フランスの地方統一選挙の解説はこちらの記事に詳しいですが(参考:)、1990年代以降の現代フランスを僕自身は作家の[p2p type=”post_tag” value=”michel-welbeck”]ミシェル・ウェルベック[/p2p]や[p2p type=”post_tag” value=”winshluss”]ヴィンシュルス[/p2p]、映画監督のギャスパー・ノエといった芸術作品をとおしてみてきているので、驚きはするものの、不思議な感じはあまりしません。彼らの表現に共通するのはフランス国民の、とりわけ、下層階級に属する庶民のひじょうに強い鬱積した感情の澱みです。それは、反ユダヤ、反イスラム、反同性愛といったひじょうに保守的で排外主義的なデモ活動や事件の頻発によくあらわれています。昨年、ノートルダム寺院の祭壇前で、国民戦線と繋がりをもつ極右活動家が反同性婚を訴えて拳銃自殺した事件は記憶にあたらしいでしょう。

そしてもうひとつ、フランスと同じくEU圏の謂わば落ちこぼれの地位にあまじてきた[p2p type=”post_tag” value=”italy”]イタリア[/p2p]では、先々月に元フィレンツェ市長の若き新首相が誕生し、最優先課題として失業問題と、長く停滞が続いているイタリア経済の回復、そして、国内に蔓延している失望感の払拭に努める考えを示しました。同国史上最年少首相となったマッテオ・レンツィはひじょうな改革派で、民主党の長老たちを「老害」として一掃し、党内に不協和音を生んだ経緯もあり、国内メディアからは「壊し屋」とも呼ばれています。

MatteoRenzi

第二次大戦中にファシスト政権 が倒れて以来、イタリアでは約70年間に60以上の内閣が誕生しては倒れてきた。近年、政治はますます機能不全に陥り、長引く不況にも出口が見えない。そんなどん底状態の国に、すい星のように「救世主」が現れた。

先月半ばに就任したばかりのレンツィだが、猛烈な仕事人間でツイッター中毒であることは既によく知られている。

ジョルジュ・ナポリターノ大統領から首相に指名された2分後には、「行くぞ、行くぞ!」と興奮気味にツイートをした。90万人以上のフォロワーに向けて朝6時40分に「政府緊急案件を処理中。#おはよう」とツイートしたこともある。首相官邸の中庭の写真付きだ。

側近たちは、レンツィを3分以上座らせておくのに苦労している。側近も番記者も、これから4年間はほとんど眠れないと覚悟している。何しろレンツィは朝は早いし、寝るのは午前2時。日曜日も仕事をする。

「マッテオは考えるのも行動を起こすのもスピーディーな世代の人間だ。結構なことだが、危なっかしいところもある」と言うのは、レンツィの右腕のグラッツィアーノ・デルリオ官房長官だ。

レンツィが政治の世界に足を踏み入れたのは95年のこと。フィレンツェ大学で法律を学んでいるとき、ロマーノ・ブロディ(後の首相)の後援組織に関わったのが最初だった。フィレンツェ県知事を経て、09年にフィレンツェ市長に就任すると、次々と改革を打ち出した。

市議会の定員を半分にし、自治体関係の公用車を半分減らして歳出を削減。その一方で公立学校の新設・改修に5100万ユーロ、社会福祉関連事業に2500万ユーロを投じ、幼稚園の待機児童を90%減らすことに成功した。

フィレンツェ中心部の歴史地区への一般車両乗り入れを禁止し、公衆無線LANスポットを500ヵ所設置するなどして観光業を呼び込むとともに、新規雇用の創出にも力を入れた。

さらにレンツィは、市の歳入を増やすやめに思い切った措置を導入して議論を巻き起こした。歴史的な施設や広場を、企業のイベントや結婚式の会場として有料で貸し出したのだ。昨年はインド人カップルがベッキオ橋を3日間借り切って結婚式を敢行。周辺住民からは大ブーイングを浴びたが、市には800万ユーロが転がり込んだ。レンツィはこうした政策を、イタリア全体にも広げたい考えだ。

ただ、フィレンツェは人口37万人の街に過ぎないが、イタリアは人口6000千万人の国。問題の大きさも桁違いだ。イタリアの今年の成長率はわずか0.6%で、公的債務はGDP比133.2%に達する見通しだ。失業率は13%近く、若者に限定すれば40%を超える。

レンツィは経済の抜本的改革を進めるとし、重要な改革を毎月1つずつ実行すると約束した。課題は山積みしている。投資を呼び込み、企業活動をサポートする一方で、雇用税を削減して雇用を生みだす必要がある。

選挙法を改正して政治の安定性を高め、司法手続きのスピードアップを図りたい。マフィア対策という避けて通れない厄介な問題もある。「イタリアは単なる美しい観光地であってはならない」」と、レンツィは議会で訴えた。

via どん底イタリアに奇跡を起こす男(シルビア・マルチェッティ)|日本版ニューズウィーク

僕自身はこのマッテオ・レンツィ首相に大きく期待を寄せています。情報化した現代人特有の高速度の思考と行動、イタリアの再生をみずからの使命と任じる壮大さ、従来の常識や価値観を踏み潰していける現実主義、そして、首相就任後発の外国訪問先としてEUの本拠地であるブリュッセルやアメリカではなく、アフリカのチュニジアを選んだ国際感覚、今日の危機の時代の政治家としては申し分ないといえます。

もっとも、ファイナンシャルタイムズ誌の社説も書いているように、レンツィ首相が労働組合をはじめとする既得権益者の反対をどこまで破っていけるかはいまだ先の観えない問題です。しかし、以前から書いているとおり(「UNIQLOの大転換と日本の有名大卒マイルドヤンキー群」)、1960年代の米国ではじまり、1990年代以降の情報化時代における世界規模の人間の知性と階級の大分断が待ったなしの状況にあるなかで、フランスの極右政党国民戦線の躍進と、イタリアのマッテオ・レンツィ首相の誕生はひじょうにおもしろい好対照を成す出来事と云えるのです。

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Chika Hitujiya

I'm Futurist, producing "Whole Earth Museum" and co-producing art project Run! Miumushi-Kun & Garapadish. This common purpose is really simple. Making you enjoy and preserving the enough requisite knowledge & things for human to survive the crisis of period.

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