現代技術と学習意欲、中国軍兵士の繊弱さと米軍の脳力強化プロジェクト

あなたは暗闇の中でも物が見える網膜チップにいくら払うだろうか。どんなに騒々しいレストランでも会話が聞こえる次世代型の人工内耳や、読んだもの全てを完璧に思い出させてくれる、海馬に直接つなぐメモリチップはどうか。声には出さないけれど頭の中ではっきりと思い浮かべたこと(例えば、「フランスの太陽王」という言葉)を自動的にインターネットで検索し、該当するウィキペディアのページを要約して、それを脳に直接映し出す埋め込み型の接続装置はどうだろう。

SFの話だろうか。おそらくSFでなくなるのもそれほど先の話ではないだろう。脳のインプラントは現在、数十年前の目のレーザー手術の段階にまで進んでいる。リスクが全くないわけではなく、非常に限定された患者にのみ意味があるものだ。しかし、脳のインプラントは今後、起きることを見せてくれているのだ。

……

能力が強化された人間――自ら進んで脳インプラントの恩恵を受けて、付随するリスクも甘受する人々――は仕事や結婚相手を探すという日常の競争でも、科学の世界でも、競技場でも武力衝突の場でも、そうでない人々より優れた成果を上げるだろう。格差は新たな難題を投げ掛けると同時に、私たちがとても想像できない可能性を広げるだろう。

via 脳インプラントの未来―暗闇でも見える網膜チップ – WSJ.com.

要約のむずかしい密度の濃い記事なので詳細は引用元をみてほしいのですが、以前少し書いたとおり(「インターネットが人間の意識の外に消える未来、ポスト情報化社会」)、世界大戦後の[p2p type=”post_tag” value=”computer”]コンピューター[/p2p]のダウンサイジング革命は、[p2p type=”post_tag” value=”mainframe”]メインフレーム[/p2p]、[p2p type=”post_tag” value=”personal-computer”]パソコン[/p2p]、モバイル、ウェアラブルときて、更にその次のインプラントまでは未来像がほのみえる段階にきています。勿論、工学的、理論的のふたつの意味で[p2p type=”post_tag” value=”nano”]ナノ[/p2p]領域の今後の進展にすべてが懸かっているといっても過言ではありません。前世紀半ばまでにある程度の理論的完成をみた現代諸科学は、近年の高度な現代技術の発展によって理論の検証や分野の統合が可能になり、多くの領域でさらなる発見と革新を生みだす好循環にはいっています。

もっとも、大学や政府の研究機関で開発の進められている技術がありうる未来像を示しているとはいえ、[p2p type=”post_tag” value=”google”]Google[/p2p]のような大企業からスタートアップ企業にいたるまでの生身の組織が一般向けの製品やサーヴィスに応用し、所謂アーリーアダプター、比較的早期にあたらしいものを導入するひとから様子をみながらおそるおそる手にするひと、最後まで頑に抵抗するひとまでを含めた普及プロセス全体を考えると、次世代技術と未来社会の関係はけっして容易なものではありません。とりわけ、既にいくつかの記事で書いてきたとおり、独裁傾向の強い国家ではひじょうに大胆な導入が試みられることもあれば(「ウズベキスタンの遺伝子診断プロジェクトと第4次経済革命」)、民主的な動きを促すものは締めだされる危険が常に付きまといます。(「YouTubeとFacebookの利用禁止をもくろむエルドアン首相は世界の例外か?

その意味では、 技術と個、技術と社会という伝統的な人文科学の問いにはきわめて重要な、あるいは、深刻な意義があるのですが、以前具体的なトピックで書いたとおり(「UNIQLOの大転換と日本の有名大卒マイルドヤンキー群)、日本国内にかぎられた視野ではみえづらいことですが、原子物理学の登場と量子力学の完成、そして、原子力技術の[p2p type=”post_tag” value=”war”]軍事[/p2p]・電力利用に代表される現代科学技術の発展と普及が急速に進んだ20世紀以降の世界は、1960年代を境に人間の知性が現代技術と社会の高度さによって自然淘汰にかけられていくものでした。すなわち、チャールズ・マレーが「新上流」と「新下流」の階級的分断として描いたように、文明人としての欲望と価値基準を失った「[p2p type=”post_tag” value=”zombie”]ゾンビ[/p2p]」の多数派の極と、初期コンピュータ科学者やエンジニアに代表される情報化の知性で従来の人間を超えていく超少数の極とに引き裂かれたのです。

もっとも、1990年代のグローバルな情報化社会の成立後、パーソナルコンピューターの性能向上と普及にともなって従来の専門技能じたいが情報化し、DTMやDTPのように比較的習得しやすいものにとって変わり、また、サイバー空間の成熟にともない多岐にわたる広範な知識がウェブ上に蓄積し編集されるようになった結果、2025年の働きかたを示して話題を呼んだ[p2p type=”post_tag” value=”lynda-gratton”]リンダ・グラットン[/p2p]がそのひとつに「専門技能の連続習得」をあげたように、人間の淘汰が技術や知識の面においてもすでにはじまっている現状があります。以前書いたとおり(「軍事用ロボットは戦争の何を変え、次世代ハイテク兵器は何を変えうるか?)、[p2p type=”post_tag” value=”drone”]無人航空機[/p2p]とデジタルネイティブが幅をきかせる軍隊では勲章付きのエースパイロットも前世紀のレガシーに過ぎなくなったのです。

体感的に多くのひとが嫌というほど知っている(と同時に、現実として認めたくはない)ことでしょうが、今日の情報化社会、更には数年後のポスト情報化社会ほど継続的な学習意欲とあたらしい知識や技術の習得、知性の強化がもとめられる時代は他にないでしょう。同時にそれは、従来の普通教育や高等教育の概念を越える現代のあたらしい教育の仕組みを制度的に要請もするのですが、さしあたり、3月25日発行の日本版ニューズウィーク誌に[p2p type=”post_tag” value=”china”]中国[/p2p]と[p2p type=”post_tag” value=”america”]アメリカ[/p2p]の軍事教育をめぐる興味深い記事が2本載っていたのでそれらを引き写しておきます。
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中国政府は軍隊の現代化計画を派手にぶち上げているが、その装備は驚くほど貧弱だ。しかし、それ以上に驚きなのはソフト面(兵士の訓練や実践への備え)のお粗末さだ。

12年夏の演習では、戦略部隊の隊員が地下塹壕で実弾頭を扱うストレスに耐え切れなくなり、15日間の演習の途中に映画鑑賞やカラオケによる休憩を挟む必要に迫られた。演習の9日目には、ホームシックにかかった兵士たちを慰めるために、わざわざ「文化演芸団」(歌や踊りで慰問する少女たち)が送り込まれたという。

近年、中国政府は人民解放軍の優秀さをしきりにアピールしている。だが、中国には「プロの軍隊」が存在しないことを忘れてはいけない。アメリカや日本、韓国、台湾などの軍隊とは異なり、人民解放軍は厳格な意味で職業軍人による戦闘部隊ではない。

人民解放軍は基本的に「党の軍隊」、つまり中国共産党の軍事部門だ。将校以上は全員が党員であり、歩兵中隊以上の部隊には「政治委員」が配属されている。党が軍を支配する構図だ。

海軍陸戦隊(人民解放軍版の海兵隊だ)による強襲上陸演習が、台湾の西海岸(あるいは東シナ海や南シナ海で領土紛争の起きそうな場所)とは似て非なる白砂のビーチで行われたりするのも、軍人ではなく党が決定権を握っているせいだろう。

空軍パイロットの月間飛行訓練時間は平均して10時間に満たない(周辺各国に比べて極端に少ない)し、数年前までは自分で自分の飛行計画を出すこともかなわなかった(それ以前は高圧的な上官が飛行計画を割り振り、パイロットは誘導路の移動や離陸を自分で判断することも許されなかった)。

中国では、軍が訓練に時間を割き過ぎるのは政治教育の時間が足りなくなることを意味する。人民解放軍の最大の任務は「党の指導者たちを(特に国内の暴力的な民主化運動のような)あらゆる的から守る」ことにあり、それを現場に周知徹底することが最優先なのだ。

via 弱いがゆえに危険な中国(イアン・イーストン)|ニューズウィーク日本版

もっとも、この記事の趣旨はたんに今の中国軍が「20世紀の技術さえ習得していない」 ことにあるのではなく、その自覚ゆえにむしろ、核兵器をはじめとする「非対称の」先制攻撃用兵器や宇宙兵器の開発に注目し、世界最大規模のサイバー戦闘部隊を擁している点に注意を促しているのですが、しかしまあ、「新下流」の極にある情報化特有の繊細な弱さや脆さが中国軍兵士を支配しているようです。ちなみに、長年、中国軍の侵攻の危険に向かいあい続けた台湾軍は少数ながら強力で、多くの軍事アナリストは彼らを打ち破ることは現在の中国軍にはできないだろうと分析しています。

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「兵器と通信技術は劇的に高度化している」と認知心理学者で海軍研究局(ONR)の脳機能訓練プログラムの責任者であるハロルド・ホーキンスは言う。「新システムを扱う、より知能の高い人材の確保が不可欠になってくる」

陸・海・空軍は既に数多くのプロジェクトに資金を提供しているが、なかでも1月に情報先端研究プロジェクト事業(IARPA)が承認した「ヒトの適応推論および問題解決能力の強化(SHARP)」プログラムは3年半の事業で初年度の予算は総額1200万ドルに上る。

SHARPプログラムでは、瞑想など昔ながらの手法から、脳に微弱な電流を流すといった斬新な方法まで、さまざまな技術を対象にしている。事実や数字を記憶するだけでなく、思いどおりに操作できる「ワーキングメモリー(作業記憶)」を強化する方法として、コンピューターゲームの大規模な研究も計画されている。

この研究結果は軍の内部はもちろん、広く一般の人々にも関係がある。学習障害を抱える子供、標準テストの成績を上げたい高校生、認知能力の低下を食い止めたい高齢者——。研究がうまくいけば、そうした人々も恩恵に浴する可能性がある。

「私たちは『神経の人工装具』と呼んでいる」と、国防高等研究計画所(DARPA)のプロジェクトマネージャーで医用生体工学者のジャスティン・サンチェスは言う。「ネズミを使った予備プログラムでは、損傷部分に装置を埋め込むことで脳の基本的な記憶構造を回復できた。今ではこうした記憶形成のメカニズムの解明が進んで、人間用の人工装具を作ることもできるようになった」

via 米軍が指揮する脳力ブートキャンプ(ダン・ハーリー)|ニューズウィーク日本版

というわけではじめのインプラント技術に話が戻ってきたわけですが、使用者に特別な習得努力を要しないと云う意味ではやはり別次元ですね。ポストヒューマンの誕生は、すなわち、[p2p type=”post_tag” value=”implant”]インプラント[/p2p]革命にある!

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Chika Hitujiya

I'm Futurist, producing "Whole Earth Museum" and co-producing art project Run! Miumushi-Kun & Garapadish. This common purpose is really simple. Making you enjoy and preserving the enough requisite knowledge & things for human to survive the crisis of period.

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