UNIQLOの大転換と日本の有名大卒マイルドヤンキー群

MildYankee

いや~、最近の日本のメディアやマーケティング業界のキーワードは「マイルドヤンキー」ですね。この一年位から、「日本のヤンキー化」なるものが騒がれていて、そこで、博報堂生活総合研究所勤務の原田曜平氏の「ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体」が発売された事で、いいとこ取り。一本釣りした感があります。基本的には「ソフトヤンキーという新たな金脈発見」的な賞賛記事が多いのですが、格差社会の最先端を行くアメリカ在住の僕としては、一抹の危うさを感じています。それは、低学歴層の増大、チェーン店の増加、高卒向けの安定職の海外へのアウトソーシング、製造業からサービス業主体経済への以降と共に、1980年代以降にアメリカの中間層がジワジワ消えていった流れと酷似しているからです。

ざっくり言って、マイルドヤンキーの特徴は以下の通りです
・生まれ育った地元指向が非常に強い(パラサイト率も高い)
・郊外や地方都市に在住(車社会)
・内向的で、上昇指向が低い(非常に保守的)
・低学歴で低収入
・ITへの関心やスキルが低い
・遠出を嫌い、生活も遊びも地元で済ませたい
・近くにあって、なんでも揃うイオンSCは夢の国
・小中学時代からの友人たちと「永遠に続く日常」を夢見る
・できちゃった結婚比率も高く、子供にキラキラネームをつける傾向
・喫煙率や飲酒率が高い

via マイルドヤンキー賞賛とその先にあるもの、、、 – アメリカ/米国不動産投資日記 – Yahoo!ブログ.

昨年中頃からの低学歴社会問題、それに続く昨今のマイルドヤンキー熱の盛りあがりにはさほどの関心を抱いていなかったのですが、上記引用の記事の方が、チャールズ・マレーの『階級「断絶」社会 アメリカ』をひきあいにだしながら、1960年代以降の[p2p type=”post_tag” value=”america”]アメリカ[/p2p]を襲っている知性と階級の極端な2極化構造と比較されていたのでおもわず眼を覚まされました。以前から既に書いてきているとおり(「検証思考の欠落、ドイツの再生可能エネルギー法の破綻と中国のトリウム原子炉建設計画の15年短縮化」)、情報化以後の社会と時代における根本的な問題はまさしくこの引き裂きにあるといっても過言ではないのです。

米国の有名な[p2p type=”post_tag” value=”libertarianism”]リバタリアニズム[/p2p]系の政治学者であるチャールズ・マレーは、アメリカ建国以来の伝統的な価値基準であり、20世紀の飛躍的躍進を遂げるために欠かせなかった「美徳(アメリカン・プロジェクト)」として、「勤勉」「正直」「結婚」「信仰」の4つを挙げていますが、1960年代以降はこれらが白人の貧困層において(すなわち、黒人やヒスパニック系に限られた社会的人種間格差の問題を越えて)急速に崩壊してきていることを統計的に示しています。勿論、具体的な価値のなかみはあくまでアメリカ固有のものなので、彼ら「新下流」の特徴を抽象度をあげていうと、あらゆる面で意欲を欠き、社会の文明的な価値にじぶんをのせることもせず、だらだらしている時間が統計的に多く、そして、善良そうな印象をあたえる(だけで、犯罪率は当然高い)ひとたちです。

そして、現在持ちあげられている日本の「マイルドヤンキー」もまた、別のブログで彼らについて書いている方が「生活能力や働く意欲、学ぶ意欲に欠け、『だらだら歩き、だらだら生きている』ような階層集団」と述べているとおり、人間としての根本的、心理的問題は、チャールズ・マレーの指摘するアメリカの「新下流」階級とたいへんに良く共通します。要するに、万事に対してひじょうに保守的な、つまり、楽チンで安易なものへの選好をみせるのです。そう、まるで[p2p type=”post_tag” value=”zombie”]ゾンビ[/p2p]のように。

当初僕がこの問題に注意を払えなかった理由は、所謂「マイルドヤンキー」とはほとんど縁が切れてしまっていること、中高生時代の僕の心のなかでかれらの占める割合が少なかったこと、そして、日本の上位大学及び大学院卒のひとたちの方が深刻な問題に思えてならなかったためです。つまり、いまだからこそ明晰に書けるまでに対象化できましたが、現在持ちあげられている「マイルドヤンキー」に非ざるひと、上記引用の図の「エリート(オタク)」にあてはまるるひと、あるいは、マレーの指摘する「新上流」階級、同著書のなかでもちいられているほかの表現を使えば、「シンボリック・アナリスト」「コグニティブ(認知、知能的)エリート」「ブルジョワ・ボヘミアン」「クリエイティブ・クラス」に本質的に属しうるひとは、日本にはたしてどれだけいるのでしょうか。

たとえば、上記引用の「マイルドヤンキー」の特徴のうち、比較的個人の意欲と努力による部分が大きく可視化されてもいるのが「ITへの関心やスキル」です。この点に問題をしぼれば、プログラミングの重要性、[p2p type=”post_tag” value=”3d-printing”]3Dプリンティング[/p2p]の革新性を理解しているひと、[p2p type=”post_tag” value=”social-media”]ソーシャルメディア[/p2p]のアカウントをmixi、[p2p type=”post_tag” value=”twitter”]Twitter[/p2p]、[p2p type=”post_tag” value=”facebook”]Facebook[/p2p]以外で動かしているひと、公開範囲をいわゆる身内に制限していないひとは、学歴に関わらず、すなわち、日本国内の上位大学を卒業しているひとたちのなかでも僕の知るかぎりではほとんどいません。勿論、根本的に共通するのは保守的な選好性で、これは、メイカーブームの火付け役となった[p2p type=”post_tag” value=”chris-anderson”]クリス・アンダーソン[/p2p]も指摘していることです。

ChrisAnderson

「日本ではオープンソースの成功例ってあるかい?」

オープンソースについては、現在日本でも熱い議論が交わされている。当然ながら、知的財産権や特許の側面から、その実効性を疑問視する意見も多い。企業の立ち位置(大企業なのか、既存のプレイヤーなのか、スタートアップなのか)によって、効果的な場合もあれば躊躇する場合もあって、温度差があるのだろう。でもその根底のところで、「そもそも日本の土壌でオープンソースは成立するのか」といった大きな命題にわたしたち日本人は直面しているのではないだろうか。

この問いは、昨年11月に「WIRED Conference 2012」でアンダーソンが来日した際に話していたことの変奏でもある。そこで彼は「メイカーズの精神を体現する日本の学生が、なぜ大手メーカーに就職しようとするのか?」という疑問を提示した(詳しくはこちらで)。つまり、オープンなカルチャーを体現するウェブで育ってきた若者が生み出すカルチャーが、必ずしもいまの日本の社会構造にフィットしていないし、社会の変革に十分つながっていない、と映るのだろう。

「30歳以下で、有名な日本のスタートアップの起業家の名前を挙げられるかい?」とアンダーソンに言われて考えあぐねていると、「じゃぁ35歳以下なら? 40歳以下にしたら誰かいるだろうか?」と畳みかけてきた。「別にメイカーでなくてもいい。誰が次のザッカーバーグだと言われているんだい?」 みなさんの頭の中では誰が思い浮かぶだろうか?

via クリス・アンダーソンのメイカー企業「3D Robotics」訪問記 – WIRED.jp 

クリス・アンダーソンがここで指摘している問題には、日本経済、日本企業の多くが戦時に成立した共産主義的な経済政策のもとで動いてきたことによる問題系と、以前、日本の音楽産業の問題として書いたことですが(「SpotifyとPandora、日本の音楽リスナーはどこに消えたのか?)、世界的な常識になりつつある[p2p type=”post_tag” value=”freemium”]フリーミアムモデル[/p2p]に対する日本の強い忌避感情を生んでいる問題系のふたつの関連がありますが、この記事ではさしあたり、日本全体のマイルドヤンキー化、新下流階級化とはまったく正反対の希有な国内の動きを示します。

というのも、チャールズ・マレーは同著書のなかで、1960年代にアメリカの名門大学に入り、1970年代末以降のアメリカ国内の急速な生活水準の向上を担った「新上流」階級の登場と孤立化の問題も書いており、当時の象徴的な出来事としてApple Ⅱの登場をあげていることも含め、僕が以前から書いていることときれいに符合するのですが(「スティーブ・ジョブズと創造性の狂気説」)、現在の日本の構造的な問題はこの「新上流」が社会的、階級的に形成されていないこと、すなわち、「新下流」傾向の外部が、「マイルドヤンキー」的人間像とは正反対の上位モデルが示されておらず、結果として汎マイルドヤンキー主義とでもいうべき強い保守傾向をだれもが無自覚に抱えこんでいることが指摘できるからです。

YanaiTadashi3

国内のユニクロ店舗に務めるパートタイマー、アルバイト約1万6000人を正社員として雇用する――。

今回、パートやアルバイトから正規雇用される社員は、特定の店舗や地域に勤務地が限定される「R(リージョナル=地域)社員」と位置づけられる。さらに今後は、パートやアルバイトからR社員への移行だけではなく、R社員としての新卒、中途採用も進める予定だ。

パートやアルバイトの正規雇用と併せて、既存の正社員の人事制度も刷新する。今後は、国内転勤はできるが海外転勤は望まない、もしくはその実力がない「N(ナショナル=国)社員」と、海外事業にチャレンジする意思と実力を備えた「G(グローバル=世界)社員」に分類する。N社員が8~9割に対し、G社員は1~2割となる見込みだ。

via 【特報】ユニクロ、パートとアルバイト1万6000人を正社員化 – 日経ビジネスオンライン

以前別の記事で少し触れましたが(「無料アプリゲームの覇者アングリーバードと芸術作品のコモディティ化」)、ファーストリテイング社長の[p2p type=”post_tag” value=”tadashi-yanai”]柳井正[/p2p]さんは、今日の情報化、ポスト情報化の激動の時代をデジタルの[p2p type=”post_tag” value=”reality”]リアリティ[/p2p]で動いている希有な日本人です。今回の[p2p type=”post_tag” value=”uniqlo”]UNIQLO[/p2p]の方針転換もそうした「新上流」的発想で動いているものなので、日経ビジネスオンラインのこの記事を書いた方のようにたんなる従業員の待遇改善と素朴にみなすと致命的な誤ちをおかします。柳井さんの実際の真意は、従業員4100人を前にして語ったという、「販売員には今の効率の2倍を求めます。その代わり、余程のことがない限り、雇用をしていきます」という宣言に眼を向けなければ観えてきません。

時代は変わりました。先行きが不安で、人々が安定した生活を求めるようになっています。残念ながら、先進国では安定を求める人がすごく多くなりました。

グローバル化はどんどん進み、移動する人はどんどん移動しています。けれど、日本や欧米のように成熟した社会になると、物的な欲望よりも、精神的な安定を求める人が多くなります。安泰で終わりたいという人が多くなりました。この流れは、いずれ発展途上国にも来るでしょう。

日常生活で成長する人生。そういう生き方を認めるような世の中になったと思います。ですから、そういう人たちの生活を守ることが店長の役割です。

本当に(スタッフの)生活を守ろうと思ったら、仕事の水準を上げないといけません。残念ながら、まだまだ世界最高水準とは言えていない。

これからは本部発でなく、「店舗発」で変えていこうと思います。

販売員全員が店長、あるいは店長代行が出来る人に変えていく。人の言うことを聞いて、疑いもなく作業する人はいらない。何が一番最適なのか、自分がやるべき仕事が全体から見てどうなのかを考えてもらう。

via 【続報】ユニクロ・柳井正氏が語るパート、アルバイト正社員化の真意 – 日経ビジネスオンライン

何度もひきあいにだしますが、発達心理学者の[p2p type=”post_tag” value=”robert-kegan”]ロバート・キーガン[/p2p]は、人間の身体的成熟後に迎える3段階めの自己変革的知性を企業CEOの25人のうちのひとりが実際に有していると統計的にあかしていますが、しかし、同時にそれは今日の企業や社会ではほとんどのひとにもとめられるようにもなっていると指摘しています。その意味では、販売員全員に店長クラスの知性や能力をもとめていく(代わり、「安定」的な待遇を約束する)と宣言した柳井さんの方針はけっしてめずらしいものではありません。むしろこれが、今日の企業と社会が新先進国の生活水準を望むひとたちにもとめる知性の標準といってよいでしょう。

勿論、新上流階級の極に喰らいついていくのか、あるいは、新下流階級の極にながされながら楽をしていくのかはそれぞれの全くの自由です。しかし、今日の日本はその世界規模の歴史的構造さえあかされていない暗い知的状況にあります。云うまでもなく、世界の時事問題をとりあげながら歴史の流れにのせていくこのブログ(の、正確には日本語カテゴリー)はそうした現状に僅かでも抗う実践の試みにほかなりません。

Buy good books
And support me, please.

[amazonjs asin=”479421958X” locale=”JP” title=”階級「断絶」社会アメリカ: 新上流と新下流の出現”]

Chika Hitujiya

I'm Futurist, producing "Whole Earth Museum" and co-producing art project Run! Miumushi-Kun & Garapadish. This common purpose is really simple. Making you enjoy and preserving the enough requisite knowledge & things for human to survive the crisis of period.

Leave a Reply

Your email address will not be published.