SpotifyとPandora、日本の音楽リスナーはどこに消えたのか?


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グローバルの音楽業界に目を向けると、SpotifyやPandora、DeezerやiTunes Radioなどさまざまな音楽ストリーミングサービスが競い合いながらユーザー獲得に向けて成長しています。

では世間で騒がれている音楽ストリーミングサービスを実際に利用しているユーザー層は一体誰なんだろうか?

Edison Researchが2014年に12歳以上のアメリカ人2023人を対象に行なった調査結果では、音楽ストリーミングを利用する年代は12-24歳の若者層が圧倒的に高いことが分かりました。

ネットラジオPandoraの場合、12-24歳で先月音楽ストリーミングサービスを利用した割合は55%に上り、25-54歳の33%、55歳以上の11%をはるかに凌駕しています。またアップルのiTunes RadioとSpotifyでも12-24歳は17%、16%と、それぞれのサービスにおいて利用の割合が唯一2桁に達している年代層になりました。

via 「アメリカ人の若者は音楽ストリーミング世代」調査結果で明らかに | All Digital Music.

最近、海外の友だちとチャットをしていていちばん答えに窮した質問は、日本ではいまどんな音楽が聴かれているのか?というものです。以前既に書いたことですが(「欧米の現代音楽チャートの進歩と日本の後進性)、ストリーミングサーヴィス等の再生回数を考慮にいれない日本のヒットチャートになにがしかの反映を観るのはありがちな時代錯誤です。レンタルショップのランキングや陳列は意識的に観るようにしていますが、地域の文化的な格差に眼を瞑ればある程度の線まではいけるかもしれません

今月17日、一般社団法人日本レコード協会が2013年度版の「音楽メディアユーザー実態調査を公表しました。世界的にはお金を音楽CDには支払わ(せ)ない方向に音楽産業全体が変貌しているなか、有料聴取が善であり健常であるとし、無料聴取を悪であり異端とする情報化社会以前の発想がこのレポート全体には根深くあり、現実の問題からは根本的に焦点の外れたわかりにくいものになっています。(参考:) というのも、以前書いたとおり(「次世代の宇宙服BioSuitとポスト情報化社会をかたち作る科学技術」)、人間の情報化の特徴のひとつには感覚や知性、教養の射程の深化があり、社会の情報化にはそうした微細な領域にまではいりこんだ[p2p type=”post_tag” value=”reality”]リアリティ[/p2p]の情報空間における現実化があるのですが、音楽聴取の話でいえば、有料聴取以前の膨大で多種多様な無料聴取がはじめにあり、それから、有料聴取をあくまでそのひとつに含めた何らかの消費行動にむかっていく今日の動線がまるでみえていないのです。

2013年版のレポートでこの水準しかないことには笑えますが、それでも、全体の6、7割程は音楽にふだんから接しており、同様に、全体の2割弱から6割強のひとは未知の楽曲に触れ、かつ、その手段はだいたい(と云うのも、無料聴取と有料聴取、CDと音楽ファイルを截然とわけているからなのですが)、無料動画配信サイトが1割強から4割弱、テレビCMが1割強から3割強、テレビの音楽番組が1割強から5割強、という数字であることはおよそ掴むことができます。そして、ヒットチャートの発想に基づいたテレビ経由のリスナーは、メディアの放送可能数に原理的な制約があるので無視するとして、無料動画配信サイト(おそらく、[p2p type=”post_tag” value=”youtube”]YouTube[/p2p]とニコニコ動画)で未知の楽曲にもふれている3割前後の比較的アクティブなリスナーの行動の蓄積が、今日の日本では特にみえなくなっていると云えます。

AKB48

多くの国で音楽販売が安定しつつあるにもかかわらず、グローバルな楽曲の売り上げは昨年、縮小した。その最大の理由が、米国に次いで世界2位の日本の音楽販売がつるべ落とし状態にあることだ。

国際レコード産業連盟(IFPI)が18日発表した統計によると、昨年日本ではデジタル音楽(ダウンロード)販売額が23%減少する一方、音楽CDなどは13%減少した。その結果、日本の音楽市場全体は約17%減の3121億円(約30億7000万ドル)となった。

 一方、昨年の世界の音楽販売は3.9%減にとどまった。日本を除くと、わずか0.1%の減少だ。

デジタル音楽販売は日本の総音楽売り上げの20%を占めているに過ぎず、米国など他の主要市場のシェアを大きく下回っている。だが、このような日本の落ち込みは、CDなどの販売が確実に減少傾向にある中で、日本市場の極端なぜい弱さを浮き彫りにしている。

米国ではデジタルダウンロードが音楽販売の主流だ。しかし日本ではダウンロード市場は他の国に比べ未発達だ。日本の多くの音楽会社は新たなデジタルサービス会社との契約に消極的だ。彼らは音楽価格設定の仕組みを守り、小売業者ではなく音楽会社が小売価格を設定する方式を保護しようとしている。

それは、音楽のCDなどによる販売をダウンロードやストリーミングよりもはるかに儲かるものにしている。例えば日本の音楽・映像大手エイベックス・グループ・ホールディングスは、アルバムを最低3000円、シングルを最低1000円で販売している。同社はポップグループのメンバーたちと会う機会を製品販売とセットで提供するなどして、可能な場合はそれを値上げしていると述べた。

via 日本の音楽販売、つるべ落とし – WSJ.com

上記引用は、WSJ誌の外国人記者の書いたものを翻訳した記事なので、公平性を期すため、同じ国際レコード産業連盟の公表を受けてJay Kogamiさんが書いたより詳細な記事も引用しておきます。

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世界の音楽業界を代表する団体、IFPI(国際レコード産業連盟)が2013年のデジタル音楽の動向をまとめたレポート「DIGITAL MUSIC REPORT」を発表しました。

レポートによれば、2013年の世界の音楽産業の売上は前年156億ドルから3.9%減少し、150億ドル(約1兆5240億円)でした。

減少の大きな原因は、日本市場の売上が16.7%減少したことが大きく響いたとレポートは指摘しています。世界2位の音楽市場である日本は、世界の音楽売上の約1/5以上の市場規模を占めています。IFPIによれば、日本の2013年の売上は30億1000万ドル(約3057億円)で、前年の36億1000万ドル(約3667億円)からダウン。減少の要因は、CDなどフィジカル音楽の売上が低迷、そしてモバイル向けダウンロードや着うたなどレガシー系モバイル音楽サービスの低迷が挙げられます。

日本以外の主要な音楽大国ではプラス売上を記録しています。日本を除いた場合、世界の音楽売上は0.1%の微減であることがレポートでは示しています。

SpotifyやDeezerなど全世界での定額制(サブスクリプション型)を含む音楽ストリーミングサービスの売上は、前年比51.3%増加し、初めて10億ドルを突破しました。

音楽ストリーミングサービスの売上はデジタル音楽売上で27%を占めるまで急成長しています(2011年時は14%)。

定額制音楽サービスおよびYouTubeなどの広告型音楽サービスの売上は前年56億3000万ドル(約5717億円)から4.3%増加し、58億7000万ドル(約5960億円)へ増加しました。

現在世界中にはメジャーレーベルを含むレコード会社とライセンス契約を締結している音楽サービスが450ほど存在し、その中には、2013年に新たに38ヶ国で運営を開始したSpotifyやDeezer、Google Play、さらにアメリカのMuveやアジア圏で指示を集めているKKBOXなど地域ごとにユーザーを獲得しているサービスが含まれます。

IFPIのロンドンオフィスでの発表会イベントに登壇した、ユニバーサルミュージック・グループ・インターナショナルの会長兼CEO、マックス・ホール(Max Hole)は、ポジティブなこととしては、音楽ストリーミングと定額制音楽サービスの世界的な成長、フィジカル売上の復元力、そしてBeats MusicやiTunes Radio、グーグルの音楽ストリーミングサービスなど音楽産業に新たなビジネスをもたらしてくれる新しいパートナー企業の登場を挙げています。

一方でネガティブなこととして、悪いニュースの大部分は日本の音楽産業だと述べ、フィジカルが中心のビジネスによる音楽保護主義とデジタル音楽に対する足並みを揃えられない点を、日本市場の急激な低迷の要因に挙げています。

via 世界規模の音楽売上をまとめた年次レポートをIFPIが公開、2013年は売上3.9%ダウン、音楽ストリーミング売上は50%以上拡大し10億ドルの大台に到達|All Digital Music

日本の音楽市場の最悪でかつ最良な点としていずれの記事もあげているのが、[p2p type=”post_tag” value=”spotify”]Spotify[/p2p]や[p2p type=”post_tag” value=”pandora-radio”]Pandora Radio[/p2p]といった欧米発の音楽サーヴィスが知的財産権と日本の音楽会社の保守的な態度のせいで未だに公式上陸できていないことです。もっとも、音楽の違法ダウンロード撲滅を理念に掲げているスウェーデン発の音楽ストリーミングサーヴィスSpotifyは近頃話題になっていますし(6月上陸予定)、ミュージックゲノムという真に壮大でかつ革新的な音楽プロジェクトを成し遂げた[p2p type=”post_tag” value=”tim-westergren”]ティム・ウェスターグレン[/p2p]のPandora Radioもテック関連の情報メディアで時折話題になるので(2007年5月以降、アメリカとカナダ以外からの接続禁止)、名前は聞いたことがあると云うひとはもちろん、日本国内からこっそり利用しているひとも少なくないでしょうが、しかし、僕の直接的な人間関係にかぎれば、両者ともに音としても文字としてもおそらくは1度も話題にされたことはありません。

詳しいことは記事をあらためて書きますが、ひとりのユーザー目線でいえば、2008年開始のSpotifyは、ヴァイラルでの人気や各国別のヒットチャート、アーティストページのアクセスのしやすさといった使い勝手の良さが、2005年開局のPandora Radioは、人力の音楽解析をもとにした独自のアルゴリズムと[p2p type=”post_tag” value=”big-data”]ビッグデータ[/p2p]によるいわゆるパーソナライズド・レコメンデーション、すなわち、ユーザーの好みと趣味の良し悪しに応じた(がゆえに、メジャーとインディーズの従来の垣根を完全に排除することに成功した)個別の選曲精度の高さがなんといっても優れています。

日本国内に潜在的にいるであろう3割前後の比較的アクティブなリスナーがどのように音楽を発見、探索しているのかはおそらくだれにもわからないでしょう。勿論、アルゴリズムに依拠することの違和を気持ち悪がる感覚も以前書いたようにわからないではありませんが(「次世代オフィスデスクStir Kinetic Deskと政治のアルゴリズム規制」)、現在の音楽産業と文化の現状といった点に問題をしぼれば、日本にはほとんど普及していない音楽の情報技術の革新と波及をとおしてみないと今日の現実はまるで観えてきません。音楽産業が腐敗しているのと、日本の音楽産業が腐敗しているのとでは意味と原理がまったく違うのです。これも以前から述べているとおり(「インターネットが人間の意識の外に消える未来、ポスト情報化社会」)、リアリティの核をフィジカルからデジタルへ転換させることが時代的に重要になっています。

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Chika Hitujiya

I'm Futurist, producing "Whole Earth Museum" and co-producing art project Run! Miumushi-Kun & Garapadish. This common purpose is really simple. Making you enjoy and preserving the enough requisite knowledge & things for human to survive the crisis of period.

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