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2月26日、ドイツで衝撃的なリポートが発表された。EFI(Expertenkommission Forschung und Innovation=研究・革新専門家委員会)といって、2006年にドイツ政府によって作られた6人の専門家からなる調査グループの提出したリポートだ。

「ドイツの気候とエネルギー政策の核心的な道具としての再生可能エネルギー法は、失敗に終わった。電力生産における再生可能エネルギーの割合は、2000年に同法が施行されて以来、7%から23%に伸びたが、そのため巨額なコストが掛かった。同法で保証されている助成金の額は、2000年には8億8300万ユーロであったが、2013年は230億ユーロに膨れ上がっている。今では、消費者の支払う電気代の5分の1がこの助成金に充てられている。同法が気候変動の防止に役立つということが根拠とされ、消費者負担の増大が強いられてきたが、実はその実態がないというところが、EFIが同法を批判する最大の理由である」

EFIによれば、CO2の排出に関してはEUの排出量取引制度があるため(この制度が機能しているかどうかは別問題としても)再生可能エネルギー法が気候変動防止に役に立っている事実はなく、電気代を高騰させているだけだというわけだ。

「同法は技術開発の役にも立っていない。その理由は20年間有効の全量固定価格買取制度で、これがあれば勝手にお金が入ってくるがために、新しい技術を開発しようというモチベーションが働かない」

20年全量固定価格買取制度の見直しを、これまで与党のCDU(ドイツキリスト教民主同盟)が口にしなかったわけではない。火急の問題として認識し、十分に説明し、取り組もうとしていたのであるが、その度に野党からあからさまに叩かれるということの繰り返しだった。

SPD(ドイツ社会民主党)や緑の党は、CDU攻撃の主力であった。CDUが電力業界や産業界の意向を汲んで、自然エネルギーへの転換にブレーキを掛けたがっているとして、囂囂と非難し続けたのである。

しかし、去年の12月に大連立が成立し、SPDのガブリエル氏がエネルギー大臣の地位に就いて以来、事態は急速に変わり始めている。今まで、CDUと歩調を合わせることなどなかった彼が突然豹変し、再生可能エネルギー法の見直しに尽力し始めたのだ。

つまり、こういう下地があるからこそ、EFIのリポートが主要ニュースで取り上げられ、今、国民の耳にしっかりと届き始めたと言えるだろう。

via ドイツの再生可能エネルギー法は失敗だったのか? 科学的視点に欠けた脱原発推進がもたらす矛盾が次々表面化.

先月書いた記事で(「ドイツの脱原発モデル、全量固定価格買取制度の破綻と反原発という「空気」)、ドイツの全量固定買取制度(FiT)が国民のひじょうに大きな負担になっている現状にくわえ、各企業に技術開発のインセンティブがあたえられない以上は産業全体の活性化も望めないことを指摘しましたが、ドイツ国内世論もおなじ結論に至りはじめているようです。

直近では、鹿児島県の川内原発1、2号機でしょうが、原子力規制委員会の審査を受けて再稼働の見通しのたった原子力発電所もいくつか出てきており、当然ですが、反原発、脱原発を訴える市民集会もそれにともない起こり続けています。もちろん、局所的には再稼働は是か非かの選択をしなくてはいけないのでしょうが、根本的にはそうしたふたつにひとつを迫る議論の構造じたいが誤りです。繰りかえしになりますが、震災前の発電体制を良しとするか悪しとするかの議論のはじめの1歩でわたしたちは足踏みをしたままなのです。(「震災の避けがたい忘却に遺す幾つかの思考」)

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大きな声で異議を唱え始めたのはEFIだけではない。

2月14日付のWirtschaftsWocheのオンライン版によれば、シュレーダー元首相(SPD)が同誌のインタビューで、脱原発が2022年までに終わることはありえないと予測した。

シュレーダー氏は脱原発の先鋒であり、2000年、彼の政権下、政府は電力大手4社との間に、脱原発合意を結んでいる。

これは、稼働中の全原発を一定の量の発電を終えたら廃炉にすること、そして、新しい原発は造らないということを取り決めたもので、2002年の原子力法改正により、法的にも効力を持った。これによりドイツは、どの原発も、それ以後の稼働年数が32年を過ぎた時点で停止することを決めたのであった。

ところが2010年、メルケル政権がその脱原発の期限を延長した。そして、電力会社は、稼働年数を延長してもらった代わりに、核燃料税という税金を支払うことが取り決められた。そしてこの時、ドイツ国民の間で、期限延長という反則に対して思いも掛けぬほどの非難が巻き起こった。

その後、すぐに福島の事故が起こった。これを機にメルケル首相は、突然180度意見を変えて、2022年までに脱原発ということを決めた。

via ドイツの再生可能エネルギー法は失敗だったのか? 科学的視点に欠けた脱原発推進がもたらす矛盾が次々表面化.

以前ドイツの友だちとメルケル政権の再生可能エネルギー政策について議論したとき、メルケル首相の産業界との癒着疑惑と脱原発姿勢への強い疑いを話されていて少し驚いたのですが、その背景にはこうした政治的な揺れ動きがあったのですね。実際に長く住んでいるひとからでないとなかなかみえてこない情報です。

震災後の日本は、稼働中であったほかの原子力発電所を最終的にはすべて停止し、外国からの化石燃料、すなわち、石炭、石油、天然ガスの輸入でその不足発電量を補っていたのですが、2012年には中国に次ぐ世界最輸入国になります。マサチューセッツ工科大学の機関誌「MIT Technology Review」のオンライン版記事によれば、2012年の日本の発電費用は300億ドル、約3兆円で、2010年からは4割増という状況です。勿論、二酸化炭素排出量も著しく増加しています。反原発、脱原発の方針をとおしていくためには日本の化石燃料利用にともなう経済的問題は最低でも越えなくてはいけません。

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そこでシュレーダー氏は言うのだ。なぜ2022年までなどという無謀なことを決めたのかと。

当時、メルケル政権が脱原発についての意見を求めるために設置したのは、「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」であった。元来、倫理委員会の役目とは、「科学と倫理のバランス」をチェックすることだ。例えば医学など、科学技術が道徳や倫理に抵触する可能性がある場合に招集される。

脱原発への意見を求めるのに倫理委員会が召集されたことは、科学的な視点が軽視された実態を如実に証明している。倫理委員会のメンバーは、社会学者や哲学者などのほかに聖職者が3人、委員長は元環境大臣と金属工学が専門の教授。

原子力の専門家も、電力会社の代表も召喚されていなかったのである。原子力についても、電力供給についても、基本的なことすら知らない人間が、脱原発を推進したのだった。

シュレーダー前首相は、辞任後すぐに、ロシアからのガスパイプラインの会社の重役に納まるという汚職まがいのことをやってのけたが、今、彼の主張では、「どれだけ自然エネルギーが増えようとも、火力発電、特にガス発電の重要性は変わらない。だから、ロシアとは仲良くしなければいけない」。

ドイツでは再生可能エネルギーが抜群に増えている。しかし、停止される原子力の代わりになるのは、基本的に火力であり、自然エネルギーではない。その現実に、ドイツ人は今ようやく気づき始めているところだ。

via ドイツの再生可能エネルギー法は失敗だったのか? 科学的視点に欠けた脱原発推進がもたらす矛盾が次々表面化.

以前別の記事で書いたとおり(「シェール革命が影を投げかける世界の政治変動とアメリカの終末感」)、近年の国際情勢の揺れ動きには米国のエネルギー政策の転換が関わっており、現在のウクライナをめぐるロシアと欧州のあいだでも天然ガスの供給問題をめぐってひじょうに入り組んだ駆けひきがなされています。(参考:「ウクライナ情勢が変える天然ガス地政学」) どちらにせよ、福島第一原発事故の際にメルケル首相がとった秩序構成的な思考では現実のエネルギー問題に対応はできません。同様に、現在の日本の反原発風潮のような思考以前の思考、というのも、情動に対する集団的同調は哺乳類にひろく見受けられる習性なのですが、当然ながらこれだけでは暴動は起こせても何かを建設的に打ち立てることはできません。

私見では、18、9世紀の近代以後の社会は、近代科学をかたち作った破壊的な懐疑の知性が実際の技術と結びつくことによって更なる経済成長を生みだす自壊作用を核とするにいたりました。結果、哺乳類史1億数千年の厚みのなかで形成された共感の情動的な知性と、文明史1万年の厚みに培われた秩序の構成的な知性とを合理的に犠牲にしながらマクロな組織や社会、グローバル経済を成立させてきました。そして、1968年以降、パーソナルコンピューターの普及に代表される超人間化と、ゾンビの席巻に代表される非人間化の極端な引き裂きの大潮流がわたしたちを決定的に飲みこんでいきます。

近いうちに別の問題であらためて書きますが、今日の情報化社会以降の時代はこれまでとは根本的に異なるリアリティをその原理に組みこんでおり、以前と同様、あるいはそれ以上に人間の成熟を難しくさせているのですが、同時に、多くのひとに対して成熟した人間以上の知性や教養、複数の技術を要求するようになっています。発達心理学者のロバート・キーガンのことばを借りれば、企業の最高経営者の25人にひとりしかもちあわせていない高度な知性、すなわち、自己変革的知性を、従業員のすべてにもとめざるをえない恒常的激動の時代が今なのです。

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福島第一原発の事故以降、世界的に原発への懸念が高まる中、中国は原発を推進する方策を取っているという。

中国が開発中の原発は、「トリウム」というウランに代わる物質を燃料とし、ウランを原料とする従来型の原発とは異なるものである。中国科学院により設立された研究所ではこのトリウムを燃料とする溶融塩原子炉の開発が進められている。

このプロジェクトに携わる研究員達は、最初の新型原発完成まで25年とされていた当初の目標を、10年に短縮するよう政府に命じられた、とガーディアン紙は報じている。

 李教授は、政府が開発を急ぐ理由を「かつては”燃料資源対策”が原発推進の理由だったが、今は”空気汚染対策”のほうが本音のようだ」とサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙に語っている。

「政府は、石炭から脱出する唯一の希望としてトリウム型原発に賭けており、そのことが研究員達に膨大なプレッシャーとなっている」と李教授は続ける。またデイリー・テレグラフ紙では、中国原子能科学研究院の古教授がこのプロジェクトを「科学者にとっては夢だが技術者にとっては悪夢」と評し、次世代原発に対する過度な期待への懸念を表している。

via 中国、次世代原発の開発推進 「安全でクリーン」な資源を利用も、“技術者には悪夢”の声 – NewSphere

以前、現行の軽水炉原発とは違う原子炉の可能性を別の記事で紹介しましたが(「幻の現代原子炉、トリウム溶融塩炉はどの国で蘇るのか?」)、先日、中国政府はトリウム原子炉の2024年完成へ建設計画の目標を修正することをきめました。近年の中国は、GDPなどは安定した成長を示してはいるものの長らく金融危機の懸念が高まり続けている国でもあります。そのうえ、現代中国の文化創造力の酷さもさることながら、素人目にみてもこの短縮はあまりに近視眼的に過ぎるでしょう。

今日の超加速度的な刷新を繰りかえし続ける社会に喰らいついていく方法のひとつは懐疑の検証思考を切り落とすことです。しかしこの知性を捨てれば、激動の現実に適応することがすくなくともみずからのちからではできなくなる。現在のエネルギー問題の話にかぎっていえば、アメリカとアラブ、東南アジア、ロシアと欧州、そして、中国の動きかたを常に観察し、学習しながら、希望的な未来予測のもとで各論的な議論を欲するひとたちが国を越えて集まる以外に途はないでしょう。

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Chika Hitujiya

I'm Futurist, producing "Whole Earth Museum" and co-producing art project Run! Miumushi-Kun & Garapadish. This common purpose is really simple. Making you enjoy and preserving the enough requisite knowledge & things for human to survive the crisis of period.
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