シェール革命が影を投げかける世界の政治変動とアメリカの終末感(加筆済み)

クリミア情勢が緊迫化する中、米議会ではロシアとの直接対決を求める声が高まっている。「死地に乗り入る600騎」(クリミア戦争を描いた英詩人テニスンの詩)のような手法ではないが、ロシアのプーチン大統領にはおなじみの「武器」の配備によって、だ。

共和党議員やエネルギー主産地の州の民主党員は、ロシアに対するウクライナの立場を弱める方法として米国の天然ガス輸出の蛇口を開くよう、オバマ米大統領に対する圧力を強めている。

欧州のロシア産ガスへの依存度は5年前より低くなった。

だが依然として欧州諸国が利用するガスの3分の1にロシア臭がついている。冬が終わったこともあり、欧州ではろうばいはみられない。貯蔵率は1年前より高い。モスクワの寒さに耐えかねて撤退したナポレオンを振り返るまでもなく、クリミア危機が9月に始まっていれば、明らかな警戒感が広がっていただろう。

via 天然ガス、クリミアめぐる米国の武器に – WSJ.com.

[p2p type=”post_tag” value=”nuclear-power”]原子力[/p2p]や[p2p type=”post_tag” value=”renewable-energy”]再生可能エネルギー[/p2p]の問題を差しひいたとしても、所謂[p2p type=”post_tag” value=”america”]アメリカ[/p2p]のシェール革命をはじめ、カナダやブラジルなどの非伝統的資源の新規開発、中東諸国や中印両国の資源需要の増大などによって世界のエネルギー市場は少しまえでは予想もできなかったほど激しく揺れ動いています。国際エネルギー機関(IEA)が昨年末、2015年までにはアメリカがサウジアラビア、ロシアを抜いて世界最大の産油国になるとの見込みを、同時に、2020年までにはテキサス州やノースダコタ州の主要な油田の産油量がピークを過ぎ、中東の産油国がふたたび優位にたつだろうと云う予測を示しました

もっとも、ウォールストリートジャーナル誌はこの報告を受けるかたちでより詳細な、そして、アメリカの産油事情により希望的なみたてと予測を示してもいます。

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多くのエネルギー市場の分析は原油だけを対象にしている。しかし、ロシアと米国は天然ガス市場でも大手のプレーヤーであり、その生産量はサウジアラビアなどの生産国よりはるかに多い。

国際エネルギー機関(IEA)によると、米国の昨年の天然ガス生産量は、1982年以来初めてロシアを上回った。ロシアの輸出は競争の激化と欧州の経済不振で打撃を受けている。

米国はまた、原油生産でもロシアと肩を並べている。今年上半期のロシアの原油・同関連燃料の生産量は日量平均1080万バレルだった。IEAによると、これは米国の生産量より90万バレル程度多いが、その差は数年前の300万バレルから大きく縮小している。

この事態を受けて、ロシア政府は米国の原油供給がロシアの原油輸出を押しのけるのではないかと懸念している。ロシア科学アカデミーのエネルギー研究所のタチアナ・ミトロバ氏は「世界市場ではロシアが最大の敗者のようだ」とし、ロシアの予算の40%以上は石油・ガスに関連した税金収入で賄われていると指摘した。

同国の全ての人が米国の脅威を感じているというわけでもない。同国の大手ガス生産会社ガスプロムは米国のシェール開発は「すぐにはじけるバブル」だとしている。同様の見解は石油輸出国機構(OPEC)のトップも1日、WSJとのインタビューで示し、米国のシェール石油ブームは10年代の終わりまでに勢いを失うだろうと述べた。

米国の楽観主義者ですら、シェールブームの期間はその価格、政府規制、それに国民の支持次第だと認めており、特に国民の支持には問題がある。

業界専門家は、多くのプライベート・エクイティー企業や海外からの投資は依然入手可能だとし、融資も比較的低コストでできると指摘した。ヒューストンの投資銀行テューダー・ピッカリング・ホルトのメイナード・ホルト共同社長は「必要資金は大きいが、資金はある。世界のエネルギー資本の川はわれわれの方に流れている」と述べた。

国のエネルギー生産会社はこれまでよりも効率的に採掘をし、新たな方法でコストを削減している。……プライベート・エクイティー・ファンドであるNGPエナジー・キャピタル・マネジメントのケン・ハーシュ最高経営責任者(CEO)は、ここ数年間に発見された大量の石油・ガスは米国のエネルギーブームが長期間続く可能性のあることを示唆している、と語った。

via 米、ロシアを抜いて世界一の石油・ガス生産国に – WSJ

もちろんこの業界にかぎった話ではないのですが、記事中に「化石燃料生産の伸びの多くは、支出と収入のギャップを埋めるのに株式を売却したり、借り入れたり、あるいは資産を売却している企業による」とあるとおり、ある種の自転車操業で成り立っているこの革命の盛りあがりをたんなるバブルとみるむきも少なくありません。しかし、実際にどうなっていくかはともあれ、米国全体がこの転換に賭けて動いていることはまちがいないでしょう。

現在進行中の[p2p type=”post_tag” value=”russia”]ロシア[/p2p]のクリミア侵攻をもっとも後押ししたのはなんといっても昨年のシリア内線におけるアメリカ外交の失策です。(ロシアのクリミア侵攻は東アジアに火を点けるのか?) もし、オバマ政権があの局面で失態を演じ、前年代までの米国の覇権の凋落を世界に深く印象付けることがなかったとしたら、ロシアがここまで機敏な侵攻に踏みきることはなかったでしょうし、プーチン政権侵攻の根拠をそもそも生まなかったかもしれません。しかし、あの出来事の裏には産業構造の変化にともなう米国政府の中東離れ、すなわち、アジア・ピポット戦略がある以上、オバマ大統領やケリー国務長官の無能さにのみ責を負わせることできません。

重要なことは、1990年代以来の社会的な次元における情報革命で達成させられたラジカル・コネクティヴィティーは、わたしたちのアイデンティティーや[p2p type=”post_tag” value=”communication”]コミュニケーション[/p2p]を根本的に変えただけでなく、政治や経済、戦争といったよりマクロな現象をも同じような多量化や高速化のミクスチャー・ワールドに変えるにいたったこと、そして、その爛熟にともなう社会危機を構造転換によってアメリカが乗り越えようとしていることです。その結果がどうなるにせよ、2008年のリーマンショック以降と云える米国の1980年代以来の終末感を知っておくに越したことはないでしょう。

ウクライナの動乱をめぐる米国のシェール輸出の地政学的問題について比較的詳細に書かれたFinancial Times誌の翻訳記事が公開されました。アメリカのシェール革命がどの程度世界のエネルギー市場に地政学的な変貌をくわえるのか、僕が当初思っていたよりも今度の東欧動乱は重要な分けめになりそうですね。

Oil Well Pumps
ホワイトハウスと連邦議会は、シェールガスとシェールオイルが世界の安全保障を強化する手段なのか、それとも米国産業を育成したり、米国人にとって燃料価格を低く抑えたりするための手段なのかを決めなければならない。

これらの結果は相容れないものではないが、どれも結局、1つの疑問に縛られている。米国はエネルギーを輸出すべきなのか、それとも国内にとどめておくべきなのか、という問題だ。

現在は、石油輸出が事実上禁止されており、天然ガスは海外に販売できるものの、欧州連合(EU)を含め、米国と貿易協定を結んでいない国・地域への輸出は政府の承認が必要で、エネルギー業界によれば承認には極めて長い時間がかかるという。

左派系シンクタンク、センター・フォー・アメリカン・プログレス(CAP)の上級研究員、ダニエル・ワイス氏は「輸出基地の建設には長い時間がかかるため、米政府はぶらぶらと救済に向かえるが、救済に駆けつけることができない」と指摘する。

リトアニアは国内で消費する天然ガスをすべてロシアから調達しており、米国のLNGの受け入れ拠点にしたいと考えているターミナルを建設中だ。在ワシントン・リトアニア大使館の首席公使、ロランダス・カチンスカス氏は「切迫感は既にあった。ウクライナでの出来事は、我々はこの政策をこれ以上遅れることなく追求しなければならないことを改めて証明した」と話している。

エネルギー輸出の政治は、共和党と民主党の意見対立と同じくらい、生産と消費の地理にも関係している。

指標となる米国のガス価格は欧州の価格のざっと半分、アジアの4分の1で、輸出の賛成派も反対派も、自分たちの選択肢は米国の低価格を維持すると主張している。誰が正しいのかはっきりしないことが、政治家がこの問題を避ける1つの理由だった。

だが、自由市場の推進を掲げるシンクタンク、ケイトー研究所のスコット・リンシコム氏は「ウクライナ情勢は、選挙の年にこの問題を取り上げたくなかった政治家に問題に取り組む誘因を与えるかもしれない。対処を強いられる可能性もある」と話している。

via シェールガスブームが米国の地政学的武器に – JBpress

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Chika Hitujiya

I'm Futurist, producing "Whole Earth Museum" and co-producing art project Run! Miumushi-Kun & Garapadish. This common purpose is really simple. Making you enjoy and preserving the enough requisite knowledge & things for human to survive the crisis of period.

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