幻の現代原子炉、トリウム溶融塩炉はどの国で蘇るのか?

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「平均年齢30歳の若手を中心に約500人が次世代炉のプロジェクトを進めている」――。中国科学院上海応用物理研究所の徐洪杰TMSRセンター長は今年4月、都内で開いたシンポジウムで開発陣容の拡大を明らかにした。

TMSRはトリウム溶融塩炉の略。

日本などの軽水炉のように、固体の燃料が高温で溶け落ちるメルトダウンは原理的に起きない。ウランの核分裂反応に比べ、プルトニウムの発生量が少ないので核不拡散に有利とされる。燃料は比較的容易に再利用でき、その過程でプルトニウムを含む放射性廃棄物は消滅していく。

トリウム溶融塩炉は米国が1960年代に実験炉を稼働、米エネルギー省(DOE)のオークリッジ国立研究所(ORNL)などにノウハウの蓄積がある。中国科学院はDOEと結んだ覚書に基づき、ORNLの研究者らと協力している。

中国科学院と交流があるNPO法人「トリウム熔融塩国際フォーラム」の吉岡律夫理事長は「中国では休日なしで開発を急いでいる」とスピードに驚く。優秀な人材を世界から素早く確保しようと「ネットでも募集している」という。

via 中国、次世代原子炉の開発急ぐ 「トリウム」に脚光  :日本経済新聞.

日本政府と国内世論がこの先のエネルギー問題をどのように考えていくのかは依然としてみえてきませんが、おそらくはこの何となくの反原発の「空気」を今後も抱えたまま、僅かながらの膿を抜くこともなく、具体的な対策をうつこともなく、現在停止中の原発をほとぼりが冷めた頃に再稼働することになるでしょう。結局致命的だったのは、影響力をもった強い個があらゆる領域を包括した長期的な未来像を描きだし、有識者や一般のひとたちとのあいだで本質的な議論を喚起できなかったことです。

以前書いたことですが、ドイツ政府の[p2p type=”post_tag” value=”fit”]脱原発政策[/p2p]はすでに破綻しています。(「ドイツの脱原発モデル、全量固定価格買取制度の破綻と反原発という「空気」」) ですから、反原発感情にもとづいた素朴な脱原発論ではなく、ウルグアイの現大統領[p2p type=”post_tag” value=”jose-mujica”]ホセ・ムヒカ[/p2p]が以前リオ会議で熱弁をふるったようなライフスタイルの根本的な転換を促すにせよ、[p2p type=”post_tag” value=”renewable-energy”]再生エネルギー[/p2p]中心の発電体制に転換をせまっていくにせよ、あるいは、[p2p type=”post_tag” value=”nuclear-power”]原子力エネルギー[/p2p]にふたたび腰を据えて取りくみなおすにせよ、何が問題で、何をどのように解決に向かわせていけるかの建設的な議論を起こさないかぎり、日本はこのまま少なからぬ優秀なひとを眠らせたまま腐臭をまき散らして沈んでいく以外に途はないでしょう。

原発問題を考えるうえで重要なのは、まず、原子力技術の問題と組織論的問題をわけることです。たとえば、戦前の日本軍を組織論的に分析した[p2p type=”post_tag” value=”ikujiro-nonaka”]野中郁次郎[/p2p]らの『失敗の本質』がいちばん有名でしょうが、典型的な日本人組織に、グランドデザインが存在しないことや行動選択が場当たり的で合理的思考にもとづいていないこと、属人的、集団主義的な関係や系で組織が成りたっていることはつとに指摘されていることです。勿論、原子力発電もなんらかの組織に動かされることには変わりはありませんが、しかし、問題解決のアプローチがまったく違います。

もうひとつ、上記の引用にあるとおり、日本国内で現在稼働中の高速増殖炉をのぞいたすべての原子炉タイプであり、同時に世界の8割以上のシェアを占めている軽水炉だけがこの世の原子炉だと混同しないことです。つまり、軽水炉原発だからこそ起こりえた、あるいは、既に起こってしまった問題と、異なる種の原子炉とそれに特化した今後の技術開発で克服可能な問題とをきちんと認識し、原子力発電固有の問題と、そうではない技術的に解決可能な問題とをわけることが重要です。現在、多くのひとのなかで素朴な観念としてかたまりつつある反原発の「空気」はこうした慎重な議論を今後も封殺し続けます。

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──トリウム熔融塩炉を使用すれば、プルトニウムを燃やしながら新たなエネルギーを生み出すことができる、ということですか?

そうです。現状における原発の計画は、軽水炉から出るプルトニウムを高速増殖炉で再処理して再び使うという「ウランープルトニウム・サイクル」を前提としたものですが、それがうまくできないことによって、プルトニウムの処理処分の問題が大きくなり続けています。加えて、核拡散の問題もあります。ところが「トリウムーウラン・サイクル」ですと、処理の問題も、核拡散の問題も解決できるのです。

というのもトリウムは放射性物質なのですが、自ら核分裂は起こしません。そこでトリウム(Th232)からウラン233を生み出す必要があるのですが、その火種としてプルトニウムを使用することで、プルトニウムを消滅させることができるのです。

──安全性はどうでしょう?

トリウム熔融塩炉というのは、LiF-BeF2というフッ化物熔融塩に、親物質としてのトリウムと、核分裂性物質のウランまたはプルトニウムを混合し、それを液体燃料として用いるものです。つまり燃料が液体で、それ自体がすでに溶けているわけですからメルトダウンという状況が起きません。また熔融塩は、沸点が1,500°Cという高温で、かつ化学的には空気と反応したりすることがありません。これはどういうことかというと、水の場合、温度を上げようとすると圧力をかけないといけませんけれど、そういった操作なしに簡単に扱えるんですね。だから炉心の外壁にしたって、軽水炉のように分厚いものである必要がないですし、福島のように水蒸気や水素が容器や格納室にたまって爆発するようなことがないのです。

──とはいえ、福島のようにすべての電力系が失われたら、やはり危険ですよね?

もちろん危険ではあります。……ただ、爆発要因はありませんから、セシウムなどの放射性物質が空気中に飛散するといった状況は起こりません。燃料の温度が上がりすぎて、かりに容器を溶かして外に流れ出しても一定期間で放熱をし終えると固体となって固まります。

via トリウム熔融塩炉は未来の原発か?- Wired

[p2p type=”post_tag” value=”lftr”]トリウム溶融塩炉[/p2p]は、軽水炉を開発した核物理学者[p2p type=”post_tag” value=”alvin-weinberg”]アルヴィン・ワインバーク[/p2p]らによってオークリッジ国立研究所で実際に稼働し、当時の原子力産業に潰されたと云う意味では、未来、次世代の原子炉というよりも、科学者たちによる本来の原子力発電と考えた方がいいでしょう。というのも、軽水炉原発はそもそも、当時の開発者たちからその危険性を指摘されながら、アメリカ海軍の[p2p type=”post_tag” value=”hyman-rickover”]ハイマン・リッコーヴァー[/p2p]によって原子力潜水艦用として開発がすすめられた簡易版原子炉だったからです。すなわち、本来化学ベースであった原子炉を、軍人でも扱えるように物理ベースの水蒸気発電に置き換えたのがこの軽水炉であり、いってしまえば中身をほかの安いものに詰め変えた粗悪品にほかなりません。

その意味でいえば、先頃の都知事選挙に立候補した[p2p type=”post_tag” value=”dr-nakamats”]ドクター・中松[/p2p]氏が、原発を「19世紀」の産物だと指摘していたのはきわめて鋭いものなのですが、結局僅かばかりの注意もあつめられませんでしたね。次回以降に続きます。
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Chika Hitujiya

I'm Futurist, producing "Whole Earth Museum" and co-producing art project Run! Miumushi-Kun & Garapadish. This common purpose is really simple. Making you enjoy and preserving the enough requisite knowledge & things for human to survive the crisis of period.

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